今月の話題〜11月〜



 今月の話題(2019.11.)は第53回日本ペインクリニック学会(熊本)より選んでみました。今月は講演から見てみます。 日本の痛みを臨床の面から検討する学会です。今回は、講演、シンポジウムなどから話題を選んでみました。一般演題からは、 次回に記載するよていです。 



1. 神経障害性疼痛の克服にむけた基礎研究からの挑戦:

(医療法人社団温故会中村病院、吉村恵)神経障害性疼痛は障害後の神経細胞における変化、さらに神経活動に及ぼすグリア細胞で の変化について解析がなされてきた。一次求心性神経、脊髄後角や脳の各層における神経機能異常やそれに関与する神経―グリア相 互作用が神経障害性疼痛の発症に重要な役割を担っている。神経障害性疼痛の発症と維持期でグリア細胞のヘテロ性が変化するとい うエビデンスも見だしている。


2. 慢性腰痛の機序と最近の話題:

(千葉大学整形外科、大島精司)腰痛疾患治療法として、新規薬剤、手術療法など多くが成果を上げている。最新の椎間板由来の腰 痛の科学として、サイトカインと感覚神経の存在が重要な因子になっており、神経身長因子(NGF)を抑制する臨床治験でオピオ イドを凌駕するデータが報告されている。腰痛を認める腰曲がりは、骨粗鬆症、骨曲がり、低骨量、骨質低下、体幹筋量、四肢筋量 の低下は強い相関を認め、これらは深く老化物質AGEと関連している。


3. 病態から理解する帯状疱疹の予防戦略:

(奈良県立医科大学皮膚科、浅田秀雄)帯状疱疹は体内に潜伏感染している水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引 き起こされる皮膚疾患である。発生5人/1000人、50才を越すと増加し、70歳以上では10人以上/1000人という。現在のワクチン は生ワクチンで、免疫抑制者には使用できないし、どのくらいの効果かについてエビデンスがない。小豆島での水痘ワクチンの臨床 使用の結果を報告する。


4. 神経障害性疼痛とノルアドレナリン性鎮痛:

(秋田大学医学経機能展開医学系、林田健一郎)末梢神経障害は神経障害性疼痛のおもな原因の一つであり、末梢、中枢神経で疼痛 促進あるいは抑制に関わる様々な部位に変化を引き起こす。その中でも脳幹の青斑核を起点とする下行性アドレナリン神経系の変化 は、内因性鎮痛メカニズムだけでなく既存の多くの鎮痛剤の作用にも重要な影響を及ぼす。


5. 骨粗鬆痛の予防戦略と慢性痛:

(熊本大学整形外科、宮本健史)骨粗鬆症は骨密度の低下により骨脆弱性が増大し、骨折のリスクが増大した疾患とされ、女性に多 いが、なぜエストロゲン欠乏により破骨細胞の活性が上昇し、骨形成細胞の活性が追い付かないのか詳細は不明だった。骨粗鬆症は 破骨細胞の活性が亢進しているため、破骨細胞の分泌する酸やプロトンが骨におおく存在する知覚神経を刺激し疼痛の原因となるこ とや、陳旧性の骨折であっても変形等により疼痛の原因となると考えられる。


6. 神経障害性疼痛に対する薬物療法:

何を第一選択薬とするか?:(東邦大学医療センター大岩綾乃)神経障害性疼痛の治療法は確立されていない。α2δリガンドであ るプレガバリンは、多くの神経障害性疼痛の第一選択薬として推奨されている。めまい、浮腫といった副作用もあるが、注意深い使 用で対応できる。使用上の「コツ」について大いに議論したい。


7. 痛みに対する認知行動療法の初歩:

(熊本大学麻酔科、田代雅文)認知行動療法は、患者の問題をそれに関連した認知(考え)、行動、感情、身体の問題という心理学 的視点から病態理解を行い、心理学的な訓練によって変化させるもので、様々な理論や治療技法から成る問題解決志向型の短期心理 療法である。この講演では認知行動療法が慢性痛患者において有効に作用するための条件、実際の技法・用語、その効果について概説する。


8. 疼痛治療におけるアプレージョンのEBMとその実際:

(奈良県立医科大学ペインセンター、渡邊恵介)疼痛治療のアプレージョンは、主にスライター針を用い高周波熱凝固(Radiofreq uency Thermocoagulation:RF)がもちいられる。局麻剤と異なり、神経遮断効果が長期間続く利点があるが、一方、神経破壊効果 による副作用が出たときには長時間続くので、十分な合併症回避のための対応が必要である。


9. 痛み研究の最近の進歩:疼痛神経学・免疫学の総合研究の進展:

(星薬科大学薬理学、成田年)疼痛学の最近は、最先端神経科学研究や遺伝子工学領域研究との融合、応用により、疼痛制御におけ る脳・末梢間クロストーク解析を基盤とした神経免疫連関や中枢神経・末梢神経連関に関する研究が展開されるようになってきた。 「痛みストレス」は、脳各部位の過興奮を相互に修飾し、睡眠障害、情動生涯を引き起こすばかりでなく、癌微小循環環境を悪化さ せ、ガン状態下において中枢からの遠心性制御異常を伴って、免疫恒常性の二次的異常を引き起こす「負の連鎖」を理解しなければ ならない。このようなことについて解説した。


10.  臨床外挿性に着目した基礎研究からりかいする原因のことなる神経障害性疼痛の違い:

(大阪大学大学院生命機能研究科、中江文)神経障害性疼痛は発生機序基盤が多岐にわたり、様々な症状や徴候によって構成される 症候群である。この痛みについてまず物理的なダメージかそれ以外かを考えると考えやすい。物理的なダメージの場合、手術後、腰 部脊柱管狭窄などの場合、物理的以外としてはヘルペス後神経痛、糖尿病や化学療法をきっかけにみられる末梢神経障害である。こ れらの共通するメカニズム、や異なるメカニズムについて話題を提供した。


11.  片頭痛:

(寿会富永病院脳神経内科、竹島多賀夫)1)片頭痛が「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」は変わらないが、「慢性片頭痛 ・chronic migrane」が定義された。関連する二次性頭痛として「薬物乱用頭痛・medication overuse headache」も定義された。片頭 痛とめまいの合併は「前庭性片頭痛・vetibular migraine」が記載された。


12.  神経障害性疼痛における薬物療法:

((岐阜大学医学部麻酔科、山口忍)共通して、三環系抗うつ剤、セロトニン・ノルアドレン再取り込み阻害薬(デュロキセチン)、 :デュロキセチン、Caチャンネルa2δリガンド(ガバペンチン、プレガバリン)の3種類が第一選択薬とされている。弱オピオイドの ドラマドールが第二選択薬とされている。新しいミロガバリンが発売され、この使用状況を報告する。


13.  神経障害性疼痛に対する薬物療法の第一選択薬はデュロキセチンである:

(岐阜大学医学部麻酔・疼痛制御学、志村文貴)神経障害性疼痛の薬物療法はデュロキセチンが適している。




筆者一言:
 日本ペインクリニック学会は、痛みに関する専門家が集まり、様々が方向から痛みについて検討し、対策、原因等の講演、発表がある学会です。 専門的な講演が多く理解の難しい話も多いのですが、興味ある演題が沢山あります。すぐに臨床に結び付かない講演も多いのですが、日々の診療 の場で参考にして行きたいと思う研究が多々あります。毎年、この学会に出るのを楽しみにしています。今回の話題提供は、講演でどんなことが 話題として取り上げられたか、提供されたかということのみです。



一口メモ

 ラグビーW杯が終わり、南アフリカが優勝しました。 ラグビー人気に火が付いた日本ですが、調べたところ来年の東京オリンピックでは、7人制のラグビーのみだそうです。 今回W杯で賑わったのは15人制でした。 今回のW杯に出ていた選手の中には7人制に転向する可能性がある方もいるようなので、知っている選手が出るかもしれませんね。 ルールが15人制と7人制で、どのように違うのかは分かりませんが楽しみです。


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