今月の話題〜7月〜



 今月の話題(2019.7.の)は、今年(2019.5.)に名古屋で行われた全日本鍼灸学会の講演の中から撰んでみました。鍼灸学会もこれから の鍼灸のあり方等の問題があり、沢山検討すべきことがあり話題は豊富です。今回は特別公演、シンポジウム中心に取り上げてみました。



1. 教育講演:女性の冷え症―寒熱理論と温熱生理学に基づく鍼灸治療:北里大学東洋医学総合研究所、伊藤剛)

漢方医学では、冷えが日常生活に苦痛や支障を来すほど強く特定の人に起こる症状として捉える治療対象としてきて症をつけ「冷え症」とした。 西欧諸国でも、古代中国から日本の江戸まで冷え症はなく、日本の近代以降に我が国で作られた概念です。冷えや冷え症には、寒熱の体内分布の 違いにより下半身型。四肢末しょう型、内蔵型、全身型の4型がある。10代から20才代位の若い女性には四肢末梢型がおおく、30代以降の女性に は内蔵型が多く、下半身型は30代以降、更年期、高齢者に多い。湯液では、気血水に基づいた治療、鍼灸では三陰交や湧泉などが用いられる。


2. 更年期障害の病態と治療戦略:(東京医科歯科大学医歯学総合研究科、寺内公一)

日本産婦人科学会では、閉経前と後の5年間の10年間に現れる多種多様な症状の中で器質的変化に起因しない症状を「更年期症状」、更年期症状 の中で日常生活に障害を起こす病態を更年期障害とする。更年期症状はほてる、痛み、冷えなどの身体症状、不安、不眠などの精神症状から構成 される。治療には、@閉経期ホルモン療法、A漢方薬、B向精神薬などが用いられ、患者が自分を取り巻く身体的・心理的・社会的状況を受容で きるように支援することが大切。


3. 性差からみた膠原病への理解:(名古屋市立大学膠原病科、難波太夫)

体を支える結合組織や血管にある膠原繊維にフィブリノイド変性という共通した病理学的特徴が生じているが、そのような疾患群の総称。全身性 エリテンマトーデス、関節リューマチ、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性多発動脈炎がある。自己免疫異常・炎症制御異常が病態の中心。 昨今の治療薬の改善により、治療目標を設定し、疾患活動性評価に基づき治療強度の調節を適切に実施するTreat to target(T2T)により患者の身 体機能や生活の質は劇的に改善した。


4. シンポジウム「女性を悩ます慢性疼痛のミステリー」:慢性疼痛のミステリー:(愛知医科大学学際的痛みセンター、牛田亨宏)

痛みを発症させる要因は様々で、器質的要因だけでなく精神的や心理社会的な要因も複雑に絡み合って起こる慢性疼痛も問題になっている。痛み が続き筋肉が萎縮し日常生活を大きく制限する要因になりADLと共にQOLも低下する。大切なのは患者さん自身が「少し痛くとも動ける方がよい」 と考えを変えることが大切で、運動を習慣づけ、体づくりに前向きになることである。


5. シンポジウム「女性泌尿器疾患へのアプローチ」:女性の下部尿路症状のミカタ:(京都府立医科大学泌尿器科、藤原敦子)

2002年日本泌尿器科学会の疫学調査で、週一回以上尿失禁のある女性は腹圧性尿失禁で12.6%(男性は3%)、切迫性尿失禁で10%(男性は7.3%) と報告されています。米国の調査で、生涯に女性11%が尿失禁か骨盤臓器の手術を置けている。女性で、下部尿路症状の発症には加齢や分娩による 骨盤底の脆弱性が大きく関与している。日本排尿機能学会でも薬物療法や手術療法のみならず、生活指導や理学療法が高く評価されており、多種 連携が重要である。


6. シンポジウム「かけがえのない記憶の再興戦略〜鍼灸の挑戦〜」:優しさを伝えるケア技術:(東京医療センター、本田美和子)

ケアの提供を受ける人と提供する人がストレスが少なく、ケアが行われる状態にするために、ユマニチュードという知覚・感情・言語によるマルチ モーダルケア技法がフランスで生まれている。「あなたは大切な存在です」というメッセイジをケアを受けるひとが理解できる形で届ける方法です。 「見る」「話す」「触れる」「立つ」というケアの4つの技を徹底して複数同時に行い、5つのステップとして実施する技法です。


7. フォーラム:「女性の診方」:女性の診方:(北里大学東洋医学総合診療所、森裕紀子)

漢方治療をする時には、冷え性など漢方治療が有効は症状もありますが、癌治療など西洋医療が第一に必要な場合があります。書く治療の長所短所を 説明し、選択を誤らないようにすることが大切です。


8. フォーラム「お母さんの味方〜発達障害にどう関わるか〜」:発達障害の理解と支援について、大阪大谷大学教育学部、小田浩伸)

障害児の姿勢・行動・情緒面との関係を研究し、発達障害や知的障害の子供の坐位及び立位姿勢を分析すると子供の姿勢に歪みや不適切なパターンが 顕著であった。教育現場で姿勢指導を行うと、姿勢の改善に伴い行動や情緒面での変化が見られた。




筆者一言:
 講演やシンポジウム等の中から撰んでみましたが、総論的な話が多く実際的診療の中での話題が少なかったようです。鍼灸学会での話題は多種多様で 、話題が絞り切れませんでしたが、このようなこのようなこと問題として取り上げられていると少しでも参考にしてもらえればと思います。考え方のバッ クボーンとして頭において、診療に役立てたいと思います。今回は「女性のミカタ」が主題でしたのでこうなったのかもしれません。



一口メモ

 今年も地震や異常気象が起こっています。 6日間で1000ミリを超える記録的な大雨の場所も。九州の雨は1977年の統計開始以来、7月としては日降水量が最も多かったそうです。 避難勧告が出ても、家に居続ける人も多いですが川がそばにある、土地が低い場所の方は、避難できるうちに非難を。 今後も各地で大雨の予報が出ていますので、2次被害にも気をつけましょう。無理をしたり、大丈夫だろうと急がずに行動をしたいですね。


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