今月の話題〜3月〜



 今月は今年の2月(2019.2。)に岐阜で行われた日本慢性疼痛学会より選んでみました。興味ある講演、発表が沢山ありましたので、 3月、4月、5月と分けて話題としたいと思います。今月は、基調講演、シンポジウムから選んでみました。慢性疼痛に対する考え方、治療の 取り組み方が次第に変わって来ています。直接聞けた講演と抄録から理解した範囲でまとめてみました。



1. オープニングシンポジウム「慢性疼痛はゼロを目指すべきかー患者と医療者の思いの差を埋めるもの」から

1) 慢性疼痛のインターベンションの役割:(奈良県立医科大学ペインセンター、渡辺恵介、藤原亜紀)慢性疼痛は、「治療に要すると 期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み(国際疼痛学会)」である。痛みそのものに対する 治療が奏功しないのが慢性疼痛であり、痛みを抱きながらもADLをあげるような治療戦略に舵を切る必要がある。非特異的腰痛が85%を占 めるとされるが、鈴木等によると、非特異的腰痛は22%、画像検査できる腰痛は(21%)、診断的ブロック治療により筋膜性腰痛・椎間 関節症・椎間板性腰痛・仙腸関節症が57%が診断された。インターベンションは治療、病態解明において有効な手段であるが、適切な治療 計画のもとに、漫然とブロック治療を繰りかえすことなく、痛み{0}を目標とした治療態度は必要である。

2) 慢性痛に対する薬物治療法の意義を考える:(仙台ペインクリニック石巻分院、川井康嗣)慢性痛に対する薬物療法の意義は、痛み の改善がADL改善と連動するタイプと心理・社会問題などで複雑化し痛みとADLが連動しにくいタイプに分けて考える必要がある。前者は、薬 物療法が本質的に有意義であるか、を常に確認する必要がある。処方意義について常時話し合い、必要は場合には患者同意のもとに薬物療法 の減量、中止を試みることも行っている。後者の心理・社会的などで複雑化し痛みとADLと連動しにくいタイプは、一般的に薬部療法に反応が 乏しい。薬物療法を通して、痛みの受容を促し、痛みにとらわれずADL向上に向けて前向きになれるようなチーム・アプローチの必要性を感じ ている。

3) 運動療法は”慢性痛0“を目指せるか:(神戸学院大学総合リハビリテーション学研究科、松原貴子)運動療法が個人の身体的又は 心理的な機能・能力を改善・改善させることは周知されている。従来の運動療法は治療目的としては“疼痛0”目指すのでなく、身体機能や 活動の促進と認知・情動の是正・改善によるQOL向上が優先されてきた。主体性を持って運動を数週間継続することで、痛覚間隔が減弱し、中 枢感作の軽減または疼痛抑制機構の回復が認められている。“慢性疼痛ゼロ”改めて目指せるかもしれない。


2. 基調講演:慢性痛の今後の展望:不確実のなかの可能性:(国際医療福祉大学、外須美夫)慢性痛ほど取り残された病気では ない。慢性痛病態解明や治療法は不可実のままである。それは、慢性痛そのものの多様性や不均一性や複雑性が大きな要因になっているが、全 人的な要因すなわち身体的病因が心理的、社会的、全人的に拡大し、互いに影響し合って姿をかえつつ慢性化するという、慢性痛の可塑性と個 別性と不可視性にもよっている。慢性痛は生命のゆがみ(身体、脳、心も含め)で起きている以上、命果てるまで人間力による可塑的修復の希 望をすててはならない。


3. 教育講演:

1) 慢性疼痛患者に漢方薬―明日から使える処方を交えてー:(獨協医科大学麻酔科、濱口眞輔)漢方薬は慢性疼痛に付随する症状の緩和に 効果を示し、痛みの緩和にも有用である。痛みに伴う熱感、寒冷、血流異常、水分異常、ストレス、痛みによる消耗などを緩和に有用。

2) 人はなぜ薬物依存になるのか?:(国立研究開発法人国立・神経医療研究センター、松本俊彦)ヘロイン使用で依存は35%、アルコール4%、 覚せい剤15%で、全て依存になるわけではない。鎮痛剤は一時的に楽にしてくれることの繰り返し、手首のリストセットは、自分のつらい感じを 楽にするためで、繰り返すと、深く大きくなり、つらい気持ちを楽にするためにである。依存からの離脱にダルクなどの民間回復施設があるが、そ こには、周囲とのつながり、正直になる場所、ほめる気遣いのある場所が大切。


4. 共催シンポジウム:帯状疱疹の痛みの残存率とワクチンによる予防:(福岡医科大学皮膚科,今福真一)水痘は空気感染で一度入る と一生ホストと過ごす。知覚神経節に潜伏感染しVZVが再発性に逆行性に感染するのが帯状疱疹で、全年齢で、発症3カ月後に痛みを残すのは12% であった。高年齢、初診時の皮膚症状重篤度、初診時の痛み重症度に比例して痛みは残りやすい。帯状疱疹ワクチンは生ワクチンとサブユニットワ クチンがあり、サブユニットワクチンが感染の危険が少なく高齢者でも高い予防効果ある。97.2%の予防効果ある。筋注で2回行うワクチンで、商品名「 シングリックス」が今年(2019)の中旬に出る予定。


5. ランチョンセミナー5:

1) 急性術後痛の慢性化予防は可能か?:信州大学麻酔蘇生学、川真田樹人)変形性膝関節の痛みには、術前に既に、末梢神経障害性疼痛があり、 手術による創直接の痛み、血管分断による虚血障害もある。膝関節の術後痛は10〜30%に痛みが見られる。慢性術後痛を予防するためには、急性 期術後鎮痛が終了した術後3-7日から3カ月までの術後亜急性期が重要な治療期間である。

2) 人工膝関節置換術(TKA)の術後疼痛管理の重要性〜患者満足度の向上を目指して〜:(山口大学整形外科、関万成)膝の機能と痛みの改善を 目的としたTKAの術後満足度に術前後遷延痛が関与していることは間違いない。TKAの術後遷延性疼痛に正確・丁寧な手術に周術期の疼痛管理が重要と 考えている。術後急性期の痛みの強いTKAは作用機序の異なる薬剤を組み合わせ投与して相乗的な効果を期待するmultimodal pain managementで対応す べきと考えている。




筆者一言:
 今年の慢性疼痛学会には、慢性疼痛に関する理解、考え方から、話題の痛みに対する方法について、幅広く取り上げています。今回、取り上げた以外に 沢山ありましたので、数回に分けて取り上げたいと思います。慢性痛はその痛みを完全にゼロにすることが難しい痛みであり、身体、心理、社会、実存的 に痛みを抱えながらADLを改善、レベルアップして行くことが大切です。



一口メモ

 24時間営業が難しいというオーナーさんの声がニュースになりました。 セブン―イレブン・ジャパンは3月中旬から営業を16時間に短縮した店舗運営の実験を始めるとのこと。 コンビニ店員に外国人も増えましたが、地域によっては、やっぱり人不足なんですね。 コンビニは体力も必要でしょうから年齢にも限界がありますよね。時代に合わせて会社も見直さなければいけない ということです。24時間営業は便利ですけどね。


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