今月の話題〜12月〜



 今月(2018.12.)は先月で取り上げました日本プライマリーケア学会の一般演題から選んでみました。先月のシンポジウム、 講演では医療はどうあるべきという一般論の話が中心でしたが、一般演題では、自分の経験が中心になっています。



1) 医療界介護関連肺炎で入院した患者における1年以内死亡のリスク因子は何か?:
(国立病院東埼玉病院総合診療科、渡邊仁、他)低栄養は入院1年以内死亡のリスク因子であった。また、経管栄養なし、入院から30日後の喀痰 吸引ありがNHCAPの1年いない死亡のリスク因子である可能性が示された。


2) 高齢入院患者における身体拘束と日常生活動作能力(ADL)低下の関連:
(福島県立医科大学、他、添野祥子、他)急性期医療機関の高齢患者に関して、看護記録から調査した。対象403名の中、94名が身体拘束(1入院 あたり平均34回)を受けていた。計11日の身体拘束によりKatzスコアが約1低下すると見積もられた。退院時ADLを低下させることが示唆され た。


3) 医療過疎地での家庭医診療所の開設が当該地区での救急搬送に及ぼす影響について:
(三重大学医学部家庭医療学、市川周平、竹村洋典)プライマリ。ケアへのアクセスを改善することで救急科の受診が抑制されるという報告があ るが、実際はどうかを人口10萬対で検討した。家庭医診療所の開設後8か月の時点では、X町での救急搬送件数に有意な影響は見られなかった。


4) 非がん患者の在宅看取りに関する要因:
(河北家庭医療学センター、舛本祥一、他)訪問診療開始時の家族の在宅看取りの希望と訪問看護の利用が在宅看取りを促進する因子であった。


5) 診療所看護師の就業継続に関連する探索的検討:
(浜松医科大学医学部看護学科、菊池慶子、他)診療所看護職は、キャリアを活かしたケアを提供しているが、社会的評価や待遇が低く、診療所看 護職の重要性に対する承認欲求を抱いている。限られた看護職で業務処理のため、休暇が取りづらい。


6) 診療所における患者満足度研究:
(奈良市立都方診療所、佐々木貫太郎、西村正大)診察時間の長短は、患者の満足度には関係なかった。待ち時間では、31〜60分群と61〜90 分群の間にのみ満足度に差があった。定期受診の診療所では、受診内容は影響しないと考えられる。


7) 顕性誤嚥性肺炎と不顕性肺炎は予後に違いがあるか:
(JOHO札幌北辰病院総合診療科、他、若林崇雄、他)顕性肺炎と不顕性肺炎はそれぞれ臨床上の特徴に細かい差異はあるものの予後に差があるとは言 えず、二つ状態を区別する必要は低い。


8) 良性発作性頭位めまい症に対して急速補液をおこなうと入院を回避できる:
(東京北医療センター総合診療科、南郷栄秀)急速補液(500ml/3時間)を行うことにより入院を1/4減らすことが出来た。


9) 腹部超音波検査にて器質的疾患を認めない腹痛症状の検討:
(ハッピー胃腸クリニック、豊田英樹、他)135例中54例(40%)で腹痛の原因と考えられる所見を認めた。消化管疾患(29.6%)、胆道系疾患(5.2%)、 婦人科疾患(3.0%)、泌尿器疾患(1.5%)、大網炎(1例)器質的原因を認めないのが60%で、過敏性腸症候群、機能性ヂスペプシア、捻じれ腸であり、 大建中湯、モサブリド、腹部マッサージで軽快した。


10) 胸腰椎圧迫骨折患者における、経皮的椎体形成術と保存的加療の予後比較:
(聖路加国際病院初期研修医、西沢俊樹、他)2284名の患者、女性が1786名(78.2%)経皮的脊椎形成術を行ったのは1750名で、平均年齢 は77.5才、 在院日数が手術例で、4.6日、保存的加療例で、27.2日、自宅退院は手術例で1697例(97.0%)、保存的加療で74.9%であった。再入院は手術例で16.4%、保存定 期加療で11.0%であった。高齢者で退院日数が短く、自宅退院に良い効果を示した経皮的椎体形成術は勧められる。


11) 大腿骨近位部骨折におけるポケットエコウの診断精度プライマリ・ケアにおける救急股関節部痛の初期評価:
(弘前大学総合診療部、穐本崇、他)急性股関節部痛に対するポケットエコウの骨折診断の精度はX線と同等の精度であった。


12) 酸化マグネシウムの長期投与により著名な高マグネシウム血症を呈した腎機能正常者の一例:
(筑波メデカルセンター総合診療部、川越亮承、他)Cr0.77で、Mgが18.9と高値を示した。酸化マグネシウムを1980mgを7年以上服用していた。1000mlの点滴10日で正常化した。


13) 腎機能障害を認めない患者に対するパラシクロビル投与により、急性腎障害・パラシクロビル脳症を生じた一例:
長崎県上五島病院内科、池田智成、他)既存の腎障害を認めない患者にパラシクロビルを投与し急性間質性腎障害、パラシクロビル脳症を生じた一例を経験した。


14) 餅による食餌性腸閉塞9例のケースシリーズ研究:
(茨城県厚生連総合病院、他、木村紀志、他)53才〜70才で、腹痛発症まで4時間から2日であった。餅の摂取と、CTによる確認であった。 15) 体位性頻脈症候群の一例:(中部徳洲会病院総合診療部、猪谷克彦)体位性頻脈症候群は起立性調節障害の一つの病型、起立時に一数以上の心 拍数増加を伴うもので、血圧低下は伴わず脳血流は減少し頭痛、ふらつきを伴う。午前中に起こりやすい。


16) 激しい咳嗽にNeuromodulaterが著効した32症例の検討:
(もとき内科クリニック、大江元樹)難治性咳嗽の原因及び慢性性咳嗽の根本的病態として近年cough hypersensitivity syndrome (CHS)が提唱されており、治療薬 としてアミトリプチンやプレガバリンなどのneuromodulaterの有効性が国際的に実証されている。CHSの診断に特異的診断法はなく、除外診断に頼らざるを負えない。


17) カフェイン離脱頭痛と診断した一例:
(麻生飯塚病院、他、中邑咲、他)カフェン離脱は一日摂取量100mg(コヒー約2杯)から発症し、症状は頭痛である。眠気や気力低下・集中力低下も見られる。カフ ェインの漸減することで改善した例を経験した。




筆者一言:
 一般演題から選んでみました。日常診療の中での経験、症例、制度に対する意見、貴重な経験、医療における希望など様々です。 このような経験の積み重ねがいい医療、いい医師を育てていくために大切ではないかと思います。



一口メモ

 平成最後の年末となりました。

今年は、トランプ大統領に掻き回された1年でもありましたし、日本スポーツ界の問題表面化などもありました。 仮想通貨大量流出もありましたし、セクハラパワハラなどもよく耳にしました。
明るいニュースは平昌オリンピックくらいでしょうか?
来年は、明るいニュースの多い年になるといいなと思います。

今年は暖冬なのか、暑かったり寒かったり気温の変化が大きいので、お体に気をつけて。


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