今月の話題〜9月〜



 今月(2019.9)の話題は、2019.7.6に東京で行われた日本疼痛漢方研究会学術集会より、興味のあった演題から選んでみ ました。私の理解できる範囲ですが、参考になれば幸いです。漢方治療は広い範囲で利用され、医療の中で役立っておりま す。                                                                                     



1. 特別講演:「疼痛疾患におけるモダン・カンポウ、和漢、中医学」;

(帝京大学外科学、新見正則)疼痛疾患でも西洋医学的加療では解決できない患者の訴え、不満不定愁訴などに振り回されることがある。 そんなときにいろいろな症状や所見から症候名なしで方剤をきめる方症相対のモダン・カンポウ的処方をしてみよう。現代中医学では症 候名が決まると治法と代表方剤がきまる。モダン・カンポウは和漢の簡略版に過ぎない。


2. 教育講演:「誰にでもわかる舌診〜四逆散・抑肝散・加味逍遥散の舌〜」;

(平田ペインクリニック、平田道彦)痛みの治療においては、交感神経系の緊張に対する配慮が欠かせない。交感神経系の緊張といって も、その内容は患者それぞれの体質、性質、社会環境により色彩が異なり「疎肝解鬱」するべき「肝気鬱結」の証を把握しなければない。 加味逍遥散か、抑肝散なのかである。舌診の基本としては、舌体、舌色、舌苔の観察に加えて、舌の呈示のしかたに注目して証の弁別に 応用して来た。


一般演題から

1) 慢性痛に対するデュロキセチンの副作用(悪心・嘔吐)とその対策について:
(岐阜県総合医療センター、佐藤泰昌、他)六君子湯は、デュロキセチンの副作用である悪心・嘔吐や便秘にたいして非常に有用だある。

2) 妊娠中の種々の痛みと当帰芍薬散:
(札幌白石産婦人科病院、武田智幸、他)妊娠中腹部の痛み、頭痛、下肢痛等の痛み に安怠薬、妊娠中の諸病に有効とされる当帰芍薬散を検討した。腹痛、下肢痛、痔の痛み、頭痛などに使用し有効であった。

3) 五十肩に対する漢方薬の有効性:
(日本医赤大学千葉北総合病院整形外科、橋口宏、他)当帰四逆加呉茱萸生姜湯は温め る効果により、冷えによる疼痛や筋緊張の改善が期待でき、夜間痛を有する拘縮期五十肩に対して有効な方剤である。

4) 重症腰部脊椎管狭窄症の腰痛憎悪に附子が有効であった1症例:
(滋賀医科大学麻酔学講座、他、中西美保、他)49才女性の脊椎間狭窄症の患者で、ワントラム、牛車腎気丸の投与に、寒冷期に 臀部痛の急性憎悪した時にブシ末(TJ−3032)2g/日投与し効果を得た。

5) 西洋医学的病態からみた変形性膝関節症の漢方治療:
(みやにし整形外科リュウマチ科、他、宮西圭太、他)西洋医学的エビデンスから漢方的な病態を解析し漢方エキス剤を投与。 (1)炎症性腰疼痛:麻黄を有するエキス剤、(2)機械的ストレス:治打撲一方、(3)軟部組織由来の痛み:駆お血剤、 (4)神経障害性疼痛:滋養剤、四物湯、(5)中枢感作による疼痛:理気剤等の漢方治療。

6) 難治性がん性腹水のコントロールに五苓散が有効であった一例:
(広島赤十字・原爆病院産婦人科、藤本真弓、他)胃がん、難治性がん性腹水の患者に五苓散を投与し、投与した翌日から、腹水は殆どない状態になった。

7) 漢方薬が有効であった顔面領域の疼痛疾患の2症例:
(江南厚生病院、麻酔科、黒川修二)64才非定型的顔面痛、70才代の三叉神経痛の患者に五苓散が有効であった。

8) 高齢者の三叉神経痛に桂枝加朮附湯が有効であった2症例:
(東京医科歯科大学歯学部ペインクリニック、木村浩子、他)83才の患者で、カルマパゼピン使用できず、桂枝加朮附湯が有効であった例を経験した。

9) 外側大腿皮神経障害に対して漢方処方が奏功した1例:
(済生会横浜市南部病院神経内科、中江啓晴、他)右外側大腿部にヒリヒリ、しびれる痛みがあり、始め五積散を投与し、牛車腎気丸、附子を追加して有効であった。

10)頸椎症性神経根症患者における防己黄耆湯の検討:
(赤羽牧羊記念クリニック、東儀洋、三橋牧)上肢のしびれが、頸椎神経根における水滞が原因と推測され、防己黄耆湯で効果があった。

11)舌通を伴う口腔乾燥症に漢方療法が奏功した一例:
(長嶋町平尾歯科診療所、他、新田英明、他)補中益気湯にて唾液量が改善し、体重増加、舌打ち行為も消失し有効であった。

12)口腔内灼熱症候群に漢方薬がそうこうした1例:
(北海道大学歯学研究院、三浦和仁、他)口腔内灼熱症候群の第一選択薬はSSRI,SNRIなどの抗うつ薬であるが、患者が希望しない場合 があり、半夏厚朴湯を開始し、1週目から効果があり、約2か月には痛みも消失し、服薬を終了した。

13)ブラキシズムに伴う口腔周辺症状に対する漢方薬の治療効果:
(西美濃康生病院歯科口腔外科、杉山貴敏)




筆者一言:
 漢方の基本の一つ「心身一如」が今回の「日本疼痛漢方研究会」の中にも色濃く見られます。痛みの問題は、人間の心に深く関与して おり、痛みからの解放も心の問題からと思います。今回の難治の痛みもアプローチの方法で改善の方法が選べます。興味ある演題があり、 紹介しました。日常の診療によい示唆を与えてくれます。



一口メモ

 9月は台風が多い月と聞きますが、南の海に台風の卵がたくさん発生しているみたいです。気をつけましょう。
最近は北朝鮮が静かかと思ったら、今度は韓国。恐ろしい国々に囲まれた日本は大変です。振り回されないように首相には、 しっかりしていて欲しいですね。アメリカにも振り回されないようにしてほしいです。


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