今月の話題〜8月〜



 今月の話題は、今年の6月12日から14日にかけて大宮で行なわれた全日本鍼灸学会より 選んでみました。鍼灸の治療と効果についての現状について行なわれたセミナーからの話題です。

セミナー、神経痛に対する鍼灸治療の効果の現状;(コーディネーター、明治鍼灸大学、今井賢治、 全日本鍼灸学会、小松秀人)

1, いわゆる”神経痛“とはなにかー神経障害性疼痛の基礎―;(明治鍼灸大学麻酔科、智原栄一) 中枢神経系から末梢神経系までの神経そのものの異常が神経障害性疼痛を引き起こす。従って、 その原因は様々で、脊椎管狭搾や椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫によるものや、帯状疱疹ウ イルスによる神経へのダメージ、糖尿病による末梢神経への障害、脳内血管の圧迫によると考え られている三叉神経痛など末梢神経への障害も原因となる。また、幻肢痛のように求心神経の正 常な入力が遮断されることにより、脊髄より上位の情報処理に混乱を来して痛みが継続する病態 もある。神経障害性疼痛の多くが慢性痛と考えられ、痛みを処理する神経ネットワークと深い繋 がりがあり、痛みは心理的修飾を受けやすい、従って、治療者は痛みの神経学的機構を理解する だけでなく、全人的に患者を支えることが重要である。 



2,  神経痛に対する鍼灸の効果と機序:基礎研究の総括;(明治鍼灸大学臨床鍼灸学、田口令奈) a)神経因性疼痛の動物モデル、b)神経因性疼痛の発症機序、不明な点が多いが、末梢神経 レベルと脳レベルにわけられる。ニュウーロンの感受性の増大(感作)、発芽現象を含む神経 再構築、脱抑制を伴う疼痛抑制系の変化、情動的、精神的変調などの変化。c)従来の鍼鎮痛 の機序、従来より下行性抑制系や広汎性侵害抑制調節(DNIC)、ゲートコントロール説、 などの疼痛抑制系と筋緊張、血流の改善などが考えられてきた。近年は免疫細胞から放出され る内因性オピオイドによる末梢性鎮痛機構の関与も示唆されている。d)神経因性疼痛に対す る鍼の効果とその作用機序、MEDLINE(〜2009,1)より検索すると、脊髄レベル の研究が66.6%、(12件)と最も多く、研究内容では下行性疼痛抑制系(3件)、遺伝子(3件) 、電気生理(2件)、内因性抗鎮痛機構(2件)、その他9件であった。治療法ではelectroacu puncture (EA)が多く、高頻度より低頻度が有効とされている。医学中央雑誌で0件であった。

(@)脊髄レベルにおける鍼の作用機序;2HZEAによる鍼鎮痛には、μ受容体、δ受容体、 5ーHT1A、5-HT3受容体が関与する。脊髄後角と後根神経節のグリア細胞由来神経栄養因子 (ODNF)とSomatostatinの発現の増加や脊髄後角でのCOX2とNMDA受容体1発現の抑制が鍼 鎮痛関わることが明らかになった。脊髄の可塑的変化であるシナプス部位での伝達効率に( 長期増強と長期抑制)おいて、刺激頻度による違いが報告されている。

(A)脳レベルにおける鍼の作用機序;脳における検討は少ない。EAによる大縫線核のorphanin FQの 減少が鍼鎮痛に関与していることがわかっている。

(B)神経血流と末梢神経再生における鍼の効果;陰部神経や坐骨神経への電気刺激、腰部への 鍼刺激は坐骨神経血流を一過性に増量させる。座骨神経圧挫モデルラットで直流電気刺激で神経 再生の促進が認められている神経因性疼痛に対する鍼治療の効果の一定の効果と機序が明らかに なってきている。われわれは成立してしまった神経痛及び神経因性疼痛を対象とすることが多い が、病態が完成する前の鍼灸治療が後々の慢性疼痛への移行を予防できる可能性がある。



3, 神経痛に対する鍼灸の効果と機序:臨床研究の総括;(明治国際医療大学臨床鍼灸学、福田文彦、 他)神経痛という語は疾患名では無く単なる症候名にすぎず、その基礎疾患の診断治療が優先され るが、保存療法や原因療法が難しい場合、痛みそのものに対する治療が行なわれる。

a)神経痛と鍼治療、神経痛の治療として、米国では、43%は何らかの補完代替医療を利用し、 そのうち鍼治療は30%であるという。日本での纏まった報告は少ない。

b)神経痛の分類及び検索、検索はpubMed、日本の文献は医学中央雑誌よりおこなった。

c)神経痛に対する鍼灸治療の効果と可能性、多くの報告は症例報告、症例集積であり質の高い 臨床試験の報告は少なかった。現時点では、神経痛に対する鍼灸治療の効果に高いエビデンス があるとは言い難い。



筆者一言 日本では鍼治療が、一般的に痛みの有力な治療法として使用されていますし、 有効な治療法として認められています。しかし、今回のこのシンポジウムで のように、世界規模で鍼というものを見てみると、問題点が多々あることが 判ります。前に世界疼痛学会での鍼についての話題をお知らせしましたよう に、世界中で鍼治療はは使用されています。約30年前にイタリアのトリノ でイタリア鍼灸学会会長のところを訪ね、鍼治療をやって見せて来たことが ありますが、多くの患者さんが来ていました。鍼灸は科学的にはいまだ未知 の医学ですので、日本には、鍼灸学の大学があり、研究スタッフもおります ので、これから鍼灸学の情報を世界へ発したいものです。




一口メモ

裁判員裁判始まりました。分かりやすく話し、聞き取りやすく親切な裁判になったようですね。 ただ、裁判員バックれたり選ばれなくて安心した方も多々いたみたいです。 確かに荷が重過ぎて、裁判員制度…どうなんでしょうか。



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