今月の話題〜5月〜



今月(2009.5.)の話題は第38回日本慢性疼痛学会(2009.2.27)より選んでみました。痛みについての日本における新しい論文です。



1,
神経因性疼痛とミクログリア活性化;(九州大学薬理学、井上和秀)末梢神経損傷モデル動物で、 活性化した脊髄ミクログリアにイオンチャンネル型ATP受容体サブタイプP2X4受容体が過剰発 現し、その受容体刺激がミクログリアからのBDNF放出を引き起こし、結果として神経因性疼痛を ひきおこす(Nature)。その後、細胞外マトリックス分子であるフィブロネクチンがインテグリ ンを介してP2X4受容体発現を増加することをみだした。これは神経因性疼痛発現にP2X4受容体― ミクログリアーニューロン連関の重要性をしめしている。 

筆者一言:Natureにも取り上げられるすばらしい論文です。是非、臨床の場に活用されることを 望みたいですね。



2,
脳卒中後疼痛の外科的治療;(日本大学脳神経外科、片山容一)被殻出血や視床出血ないし梗塞 あるいは延髄梗塞などの脳卒中によって感覚障害を起こすと、しばらくするとその領域に難治性 の疼痛を生ずることがある(視床痛、視床上痛、延髄痛)。このいたみは疼痛を含む感覚障害が 先行することから、痛覚の中枢内伝導路の遮断に起因すると考えられる。この治療に電極の慢性 植え込みに寄る大脳皮質、視床の運動領野の刺激療法を試みている。時に、運動野の刺激によっ て疼痛が軽減する例がある。われわれの方法で、一年以上の疼痛軽減の得られる例は約50%弱 である。随伴する運動麻痺の強くない例に有効なものが多い。疼痛の軽減とは別に、不随意運動 や固痙縮の軽減によって運動機能の改善をみることがある

筆者一言;難治性の痛みの治療、中枢性の痛みの治療に中枢神経の刺激療法が利用されるが、片 山等は、運動領野の刺激が痛みの治療に効果があり、運動機能の改善にも効果をあげることがあ ると報告しており、これからの発展が期待されます。



3,
神経の機能変化と運動器痛の慢性化;(愛知医科大学学際的痛みセンター、牛田亨宏)高齢化社会 を迎え、腰痛、肩こり、関節痛といった運動器の慢性的な痛みをゆうする患者が疾患の上位を占め てきて、重要な社会的問題にもなってきている。神経障害性疼痛などの神経への障害が明確である 疾患だけでなく、関節や筋の障害に由来するような痛みにおいても神経系の機能変化が重要な役割 を果たしている。運動器の筋緊張、関節の不安定要因、荷重分布変化など様々なバイオメカニクス の要因も神経系の機能変化に大きい影響をあたえている。一次求心性繊維からの持続的な侵害入力 は脊髄後角細胞の感作や可塑的変化を誘発し、最終的に痛みを経験する脳内においてもおおきな影 響がひきおこされ慢性的に痛みが遷延する要因となる。

筆者一言;以前にもこの件については、論文を紹介してきたが、臨床でもこのような慢性痛の要因 を考えながら対処していく必要がある。



筆者一言; 痛みは、誰にとっても苦についての痛の代表であり、願わくば避けたい、除去したいと思うものです。 これまでに多くの痛みについての研究を紹介してきました。中には実際の臨床で有用されておるもの もあります。今回の痛みの研究論文も臨床にその考え方が使用されてきています。これからの発展を 期待したいですね。




一口メモ

豚インフルエンザは、そんな怖いものでは無いらしいですね。感染者はふえていますが、 死者が出たのは病院に行くことが出来ない地域の方だそう。弱毒性なのですぐ病院に 行けば大丈夫です。大騒ぎしているので どれだけ危険なんだ?とドキドキしてしまいました。 うがい、手洗いの基本からですね。



「今月の話題」バックナンバーへ