グラスゴーの 学会会場にて 今月の話題も今年の8月にスコットランドのグラスゴーで行なわれたIASP世界疼痛学会の中から選んでもました。痒みはあまり研究されていませんが今回、痒みの話題がありましたので取り上げてみました。 1, a)人間では、痒みを引き起こす基本的な物質はヒスタミンであるが、その他に、セロトニンやprotease(タンパク分解酵素)がある。proteaseはProtease-activated receptorに作用するという。 b)痒み刺激には、掻くという動作で反応し、痛みを起こす侵害刺激には手足を引っ込めるなど刺激を避ける動作で反応し、掻くということはない。 c)掻くという動作は痛みを抑える働きがある。 d)オピオイドは痛みは軽減させるが、痒みをかえって度々、引き起こす。 e)モルフィンの拮抗剤であるナロキソンはマウスで5―HTによる掻く動作を抑制する f)生理学的研究でも痒みのSpecificity Theoryを支持する報告がある。機械的刺激に反応しない求心性C繊維は皮内のセロトニンによる痒み刺激に一致して反応が見られる。 g)痛みや痒み誘発物質に反応するC繊維は脊髄後角浅部に入っており、猫の脊髄視床路のLaminaIの一部がヒスタミン感受性求心線維の性質を持っている。 h)脊髄後角浅部に存在Gastrin releasing peptide receptor(GRPR)が痒みを伝える神経伝達物質、受容器として有力視されている。GRPRのないノックアウトマウスでは、痒み誘発物質による痒み運動が有意に減少する。 さて、このような報告にかかわらず、痛みと痒みを完全に分けることは行き過ぎとも考えられる。痒みと痛みの誘発刺激による体制感覚と運動の誘発領野は重なっている。脊髄レベルでも痛みと痒みに関する電気生理的研究でも重なりがみられる。痛みと痒みを伝える脊髄視床路は、痒みを起こすヒスタミンに反応し、痛みを起こすCapsaicinにも反応する。これから研究が必要である。 筆者一言;痒みと痛みは、仲間の感覚と考えられて来たが、痒みには痒みの特有な神経経路が存在するとする考えがあるとする報告であり、興味あるものです。 2, Neuronal mechanism of joint pain : (Universitaetsklinikum Jenn,Germany, H.Schaible) リュウマチや変形性関節症のような炎症や変性が原因の関節痛は数も多く、長期にわたり苦痛の原因となり、日常生活の障害となる。かんせつの痛みは関節の末梢神経だけでなく、中枢の侵害受容系が関係している。関節の末梢神経が機形械的刺激に過敏になっており、機械的刺激受容と侵害刺激受容神経路が関与している。加えて、脊髄、脊髄より中枢でも機械的刺激にたいする感受性の亢進が認められる。 筆者一言; 関節の痛みにも、中枢の感受性亢進が関与するという報告です。 筆者一言 痒みは直接生命に関与することが少ないために研究が進んでいませんが、今回、痒みを取り上げた発表がありましたので、痒み研究の現状を知るのに良い機会と思い纏めてみました。痒みにも特有の神経経路があるようですし、これからの研究の発展を待ちたいですね。関節の痛みのような末梢性の痛みかと思われる場合も中枢の関与が考えられるんですね。痛みは末梢と中枢が何時も何らかの形で関与しているんですね。 |
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