今月の話題〜11月〜



今月の話題は、漢方から取ってみました。一つは、漢方の発祥の由来、第二は中医学と日本漢方の相違、 第三は中医学についての話題です。雑誌“痛みと漢方”よりとりました。



1、 漢方の薬理学的根拠;(丁宗鉄、北里研究所、痛みと漢方)

(1)、古代から、社会のすみずみまで宗教の影響が強かった。西欧においては、近世にいたるまで医学は宗教の束縛から解かれなかったが、中国では約1千年前に宗教と医学が一線を画していた。
(2)、地球上の生物としては、まず、植物が発生し、それを食物とすることで動物は存在してきた。従って、動物神経組織の調節 系に深く関与する生理活性物質を大量に含む植物を薬として利用してきたのは、祖先の知恵である。
(3)、ある病的状態において薬効が認められえるのが漢方薬であり、正常であろうと異常であろうと、一定の薬効が認められるのが西洋薬である。



2、 日本漢方と中医学の違いについて;(世良田和幸、昭和大学横浜市北部病院、痛みと漢方)

(1)日本も中国も“神農本草経”“ 黄帝内経(素門、霊枢)”“傷寒雑病論(傷寒論、金匱要略)”が三大古典である。
(2)周秦のころ、陰陽五行説の盛んなころに作られた黄帝内経は、陰陽五行説で人間の生理と病理を類推する論法を取っている。
(3)中医学では、黄帝内経や金元医学の理論を重視し、患者の症候を、望、聞、問、接の診断法で、陰陽五行説に従って、徹底的に整理し、病理を絞り込み、これを中国生薬の経験的な効能 で治療を行う“病理弁証”といわれる方法である。この方法だと用薬は方程式のように難しくなり、薬物にも限度があって、病にたいす る真の方を見つけるのが困難となる。
(4)日本漢方では、古方の考えが主流であるが、後世方、考証学派もある。日本漢方(古方)は、後世派の陰陽五行説を主にした考え方を観念的、思弁的な理論で、実際の臨床に役に立たないとし、傷寒雑病論の実証精神への回帰 を主張した。中国から輸入した生薬療法理論を日本的に改変した症候パターン(証)、腹診などの日本独自の診断法を用いて処方を適用 する方法、“方剤弁証”の方法である。方証一致の隋証治療である。この方法だと、理論という学を排したために自己の経験に重きをおき 、術を重視せざるを得なくなった。病気を全身的に、体質的に捉えがちとなる。日本漢方のもう一つの特徴は、エキス剤の使用である。



3、 中医学からみた痛みに対する漢方治療の実際;(北島敏光、独協大学、痛みと漢方)

中医学では、弁証論治あるいは弁証施治に 基づき疾病の原因あるいは本質を見極めたうえで漢方薬を選定する。弁証論治は、“理法方薬”からなり、“理”とは中医学理論、“法” とは治療方法、“方”とは方剤、“薬”とは生薬の薬効から構成される。



筆者寸評 わたしは、日本漢方(古方)と鍼灸を行っておりますが、なかなか味があり、現代の医学と併用していくのに有用と思っています。 中医学にも興味を持って入ってみたことがありますが、江戸時代に先駆者が感じたように、形式的に過ぎて、実際の臨床から離れて いくように感じ、古方の方式を用いています。鍼灸では、日本でも陰陽五行、臓腑経絡の考え方が基礎となっていますが、この領域 でも、日本では先駆者が日本漢方的考えを取り入れており、実際的かとおもわれます。韓国では、中国や日本とは、異なった東洋医 学が発展しているようです。中国、韓国では東洋医学と西洋医学の二本立ての教育制度で、医師免許も、医療制度も分かれており、 日本のように西洋医学の医師が東洋医学、漢方医学、鍼灸を行うことが出来ません。日本は、日本のよさを大いに発展させたいもの と思います。




一口メモ

16歳の女の子が母親をタリウムで殺害しようとした事件は衝撃的でした・・。普通に薬局で購入したタリウム。 18歳未満に販売が禁止されていたのに買えたのがおかしいですよね?販売した薬剤師は、この女の子が 「化学部で薬物の知識が豊富だったことから信用していた」そうですけど、そういう問題じゃないですよ〜。 この時代に会ったばかりの人を信用なんて普段でも有り得ないのに。

秋ですね。紅葉してますね。私はデジカメ持って散歩しています^−^水に映る紅葉も綺麗なんですよ。私は芸術の秋です。 皆さんは何の秋にはまってますか?




「今月の話題」バックナンバーへ