今月の話題〜9月〜



今月の話題は、8月24日から8月28日にかけて出席した国際疼痛学会(オーストラリアのシドニーで行われた)より選んでみました。話題は沢山ありますが、帯状 疱疹後神経痛についてのワークショップより話題を選んでみました。

  

Gunnar L.Wasner、M.D. Neurological Clinic and Dept of Neurological Pain Research and Therapy, Christian Albrechts Universitat,Kiel, Germany 帯状疱疹後神経痛(PHN)は、現在も最も治療困難な痛みの一つである。何故かというと帯状疱疹後神経痛についての情報、 データ、知識、その病態生理の解明が十分でないことである。帯状疱疹の発症機序とPHNの発症機序は異なって起こると考え られる。小児期における水痘ワクチンの接種が帯状疱疹に対してどのような影響を与えるかは興味のあるところである。こ れらの問題について今回のワークショップを組んだ。



1、Epidemiology of Herpes Zoster (HZ) and Postherpetic Neuraligia(PHN):present and future(Robert W. Jhonson, MB、Anesthesia and Pain Management, Bristol, UK )  高齢者の増加と免疫抑制作用のある薬剤の使用が、最近のPHN増加の大きい要因となってきている。 抗ウイルス剤をHZに投与することで、PHNの発生を減らすことが、将来相当可能になるであろう。 現在は、この抗ウイルス剤を早期に投与できるように、一般の認識と知識が必要である。高齢者の 増加が、HZの発生とそれに伴うPHNの発生が増加の要因となってきている。小児期に水痘ワクチン を計画的に投与し水痘を根絶することにより、帯状疱疹をも相当に減少させることが可能であろう。



2、Varicella Zoster Virus induces changes n dorsal root ganglia and NMDA dependent behavoral reflex sensitization in rodents that is attenuated by gabapentin or sodium channel blocking drugs:(Susan M.Fleetwood-wolker, Centre for Neuroscience Reseach,Division of Veterinary Biomedical Science,Summerhal,Edinburgh,UK)最近の羊における水痘ウイルス慢性感 染の研究により脊髄後根神経節に、ウイルスの早期遺伝子蛋白と、有髄の求心性繊維の neurofilament-200の存在 を示すneuropeptide Y の増加を認めた。さらに、Nav1,3とNav1.8のナトリウムチャンネル、neuropep tide galanin, 転写因子factor-3の増加を示している。水痘ウイルス感染は、侵害性の温度と機械的刺 激に反応するNMDAレセプターの反応を働かせていることを示していると思われる。これらの反応は、gabapentinやナトリウムレセプターのブロッカーであるmexiletine,lamotrigineの投与により変えること ができた。羊の水痘ウイルス感染に見られる神経後根の所見は、他の神経因性疼痛でみられる変化と同様である。



3、Neurological assessmet and treatment of posthepetic neuralgia(PHN):(Gunner L. Wasner MD. ) PHNにおいては、何か通常とは異なる痛みのmechanismが働くものと思われる。 帯状疱疹罹患部の感覚の表現を詳細に検討することにより、PHNの裏にあるものが明らかになる ものと思われまる。障害領域の詳細なquantitative sensory testing(QST)を色々なpsychophysiological methodsも加え検討することが一つの鍵となろう。現在のところ、神経因性疼痛の治 療は、様々な薬剤、tricyclics,Ca-blocker, Na-blocker, opioids, topical capsaicin,topic al lidocaineが使用されるが、不十分である。しかし、これらの薬剤の作用機序を明らかにして 行くことが、新しい治療薬剤の開発に大切な一歩となる。



筆者一言 今回、世界中から痛みに関係する専門家が、集まり、広範囲な痛みについての研究発表がなされた。 帯状疱疹後神経痛は、治療困難な痛みであることは、現在も変わっていないが、近いうちにこの問題も 解決されることが必要であるし、今回の話題にも取り上げたが、幾つかの問題が、明らかにになって来 ており、期待していいと思うし、期待している。漢方治療、針治療などの東洋医学の発展している日本 からの参加がなかったのは残念である。




一口メモ

ここのところ、地震・台風などで災害が多く発生していて防災グッズが大人気。大量の電池や水、缶入りクラッカーやラジオ、 棚が倒れないようにとめる金具などなど品切れ状態。そして驚いたのは「簡易トイレ」や「手動発電ケータイ充電器」。
そうそう、最近CMでも見るんですけどTV付き携帯電話やラジオ付き携帯電話が地震後から大人気だそうです。
色々備えも必要ですけど、情報を得る道具っていうのも大切ですよね。
次は東海あたりで大きな地震という話もあるので、今のうちに防災グッズ揃えて置くのもいいかもしれませんよ?




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