今月の話題〜10月〜



 今月も2014.6.27〜6.29.東京で行われた日本東洋医学会より選んでみました。今回は、生薬の確保の問題、漢方の作用機序、 リュウマチ、膠原病と漢方についての話題の一部に触れてみます。



シンポジウム「生薬資源確保の諸問題」

1. 我が国における生薬生産の課題(株・金井藤吉商店、金井藤雄)生薬の原料は植物由来、動物由来、鉱物由来があり、様々な法律により規制を 受けている。関係官庁も厚生労働省、農林水産省、経済産業省、一部文部省に管理されている。資金の必要性と共に法の整備も必要であり、生産者 から消費者までの調和のとれた流、生産者、生薬供給業者、メーカー、医薬機関を含めた新しい新たな活動が必要である。 2. 国産オタネニンジン復活を目指す栽培研究の最前線(千葉大学環境フィールド科学センター、渡辺均)オタネニンジンは中国、朝鮮半島で生産され、 漢方薬の強壮薬物として重要な地位を占めている。オタネニンジンは広大土地を要し、連作が困難ために供給が今後不足が考慮される。オタネニンジン 栽培の長期化は種子後種の必要性と、夏から翌春までの休眠にある。育苗期間の短縮や休眠期間の回避できれば、栽培期間の短縮化が出来る。新たな生 産体系の構築により従来の1/2の栽培期間生産することが可能になった。


シンポジウムリュウマチ膠原病の漢方治療最前線

1. 古典理論からみたリョウマチ・膠原病疾患(熊本赤十字病院総合内科、加島雅之)関節リュウマチが古典の疾患概念と現代の疾患概念が一致をみる。 黄帝内経の「?証」という考え方が関節リュウマチに相当する。炎症性疾患の病態を考える上で、「相火」がkeyとなる。相火を評価とコントロール方 法の観念を踏まえて考えてみる。

2. リュウマチ性多発筋痛症(PMR)にたいする漢方治療:(富山大学大学院薬学研究部、引綱宏彰)PMR患者にほぼ共通して認められる血病態に対 して、種々の駆お血剤(疎経活血湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、腸癰湯加芍薬、?苡附子敗癰散、当帰芍薬散、徐筋立安散)を用いると効果がある。我々 の漢方治療ストラテジー。

1) 基本的に第一選択薬としてステロイドを使用する。
2) 炎症反応の軽度な例、ステロイドが長期になり、減量困難な例に漢方使用。
3) ステロイド剤と共に駆お血剤を投与し、適宜、解表剤、柴胡剤、附子剤の併用。
4) ステロイド剤減量時に再燃し、CRPが20mg/dl以下の場合はステロイド増量せずに漢方併用。
5) 炎症反応の改善が停滞した時は、漢方の構成生薬の増量を検討。



シンポジウム「Basic seminar 生薬薬理/服薬指導より

1. 漢方薬はどう効くのか、なぜ効くのか:(病態科学研究所、田代真一)漢方薬の有効成分は配糖体が主力をなしている。植物では、使い終わった生理活性 物質糖化され、リン脂質で出来た細胞膜を通過できず吸収できない。腸内細菌がこの糖を切り離し、脂溶性を増して吸収され、体内で利用出来るようになる。 漢方の有用性は盲腸に住む菌叢に影響される。これが、漢方薬の効果出るまでに時間をようする、効果に個人差がある、投与中に効果が強まる、漢方薬投与と 抗菌剤の併用に問題がある、漢方投与始めや変方時に腹が緩むことがある、などの理由と考えられる。



筆者一言

 漢方についてはここに取り上げましたように幅広い研究がなされております。一つ一つにお論文はすばらしいのですが、日本漢方とは何かとなると、今一つ はっきりしたものがありません。





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