今月の話題〜2月〜



 今月の話題は、今年(2019.1.6.)東京で行われた「第39回メディコピア」「変わりつつあるアレルギー疾患の考え方」より選んでみました。一般の方や医師までを対象と したシンポジウムです。気の付いたところを私の理解した範囲で纏めてみました。



1. アレルギー疾患診療の最新動向:

(帝京大学内科呼吸器・アレルギー学、山口正雄)アレルギー疾患は多彩な症状を呈するが、症状を呈するメカニズムは共通点がある。抗原(アレルゲン)とそれを認識するIgE 抗体との結合に続く細胞刺激・組織損傷が発端となる。アレルギー疾患の病態解析と治療が進歩し、感作と症状発現の原因が同一品目と限らず、加水分解小麦含有石鹸と小麦食 品依存性運動誘発アナフィラキシー、アレルゲン免疫療法、気管支喘息のアレルギー性炎症を病態の中心とする位置づけなどアレルギーの考え方大きく変わってきた。当院では、 アニサキスと小麦アナフィラキシーが多い。



2. アレルギー疾患発症への取り組み:

(国立成育医療研究センター、齊藤博久)アレルギーは、アレルゲンで刺激されたB細胞でIgE抗体が作られ、マスト細胞に結合し、刺激物質 を遊離し反応を起こす。アレルギー疾患は、環境抗原に対するIgE抗体の獲得を契機に発症する。乳幼児早期のアトピー性皮膚炎の存在はその後のIgE抗体の獲得とアレルギー疾患の リスクと強く相関する。成人期になるとメモリー機能を持つ免疫細胞のため獲得したIgE抗体が消失するは難しい。当研究所の新しい取り組みとして、1)新生児期からのスキンケ アと乳児早期発症アトピー性皮膚炎に対する積極的対応、2)アレルゲンになりやすい食物(鶏卵)等抗原の生後半年から早期少量摂取、3)IgEを標的とした抗体医療の発症予防 応用、を取り組んでいる。胎児期に母親にIgEを投与すると成長後にアレルギーが抑えられるという研究がある。



3. 検査:

(藤田医科大学総合アレルギー科、矢上晶子)食物アレルギーでは、一人の患者さんが複数の野菜や果物により交叉感作による過敏反応を誘発したり、通常は摂取できる 食材(主に小麦)でも、接種後に運動をすることにより、食物依存性運動誘発アナフィラキシーショック、鎮痛剤と同時に摂取するとアナフィラキシーショックを誘発するなどを呈 する患者さんに遭遇する。一見複雑に見える食物アレルギーであっても、現在は血液検査で原因アレルゲン(IgE抗体)をある程度明らかにすることができる。IgE抗体も血流中に存 在するが、抗原抗体反応を起こさなければ、その食物は摂取可である。アレルギー反応にも交叉反応、サラカンバと最近多いのは大豆、豆腐、ゴム手袋のラテッテスとバナナ、トマ ト、メロン、キウイの交叉反応が見られる。最近、IgG抗体を話題にするひともいるが、IgG抗体ではアナフラキシー反応は起こらない。



4. 特別発現:

(長野オリンピック金メダリスト、清水宏保)気管支喘息があり、その治療の目的でスケートを小児期より行い、それが金メダルへと繋がった。大切なのは、1)自分 のアレルギー原を知ること、2)自分なりの対応を考えること、3)うまく薬と付き合うこと、などで、自分の体をよく知って興味を持って生活することが大切です。



5. 食物アレルギー:

(国立病院機構相模原病院臨床研究センター、海老原元宏)食物アレルギーは小児から成人までみとめられるが、乳幼児が最も多く、各年齢層で原因食物や病態 が異なる。全年齢を通して食物アレルギーの多くはIgE依存性の即時型である。診断と管理は食物経口負荷試験と抗原特異的IgE抗体価の診断、評価で、向上している。食物アレルギー の解析も進み、特異的コンポーネントと交叉抗原性の元となるコンポーネントの区別が可能となっている。



6. 喘息の克服に向けて:

(複十字病院、太田健)喘息は症候群として捉えるべき疾患であると考えられている。患者の治療は、個別化治療の確立が必要で、適切な長期管理を患者さん ごとに選択し実行することを含み、通常の治療薬でコントロールできない難治喘息では、最新の研究成果による病態分析により、生物製剤の適応を考慮し選択する協議の個別化が選択さ れる。喘息は1)可逆的気道狭窄、2)気道の過敏性、3)慢性の気道炎症、4)気道のリモデリングがあり、診断は、1)スパイロメトリー・努力性肺活量・ピークフローメーター、 2)末梢血中の好酸球の増加、3)慢性の気道炎症、4)IgE抗体の測定、5)呼気NOの濃度増加である。治療の目標は、日常生活が可で、症状もない状態である。



7. アトピー性皮膚炎:

(京都府立医科大学皮膚科、加藤則人)アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下(乾燥皮膚・ドライスキン)やアレルギーを起こしやすい体質を背景に、種 々の悪化因子が加わって湿疹が生じ、軽快と悪化を繰り返す。治療の基本は、1)湿疹のために生じた悪循環による悪化を止めるために、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を中心とした薬 で治療、2)保湿のスキンケアで低下した皮膚バリア機能の補完、3)個々で異なる悪化因子に対する対策、等の実践。皮膚の乾燥を防ぐ働きは、角質細胞間脂質、皮脂膜、天然保湿因子 (フィラグリン等のアミノ酸)による。保湿剤としてヒルロイドソフトやワセリンを使用する。



8. アレルギー性鼻炎・花粉症:

(千葉大学耳鼻咽喉科、岡本美孝)通年性、主にダニが原因と考えられアレルギー性鼻炎と季節性の主に花粉によると考えられるものが多くみられる。治 療には、原因アレルゲンの回避と対症療法としての薬物療法が広く行われてている。近年、アレルゲン免疫療法(減感作療法)の自宅で投与可能な舌下免疫療法が登場し注目されている。



筆者一言

 アレルギー疾患の最近の考えについてまとめて話を聞くことが出来ました。毎年、このシンポジウムを楽しみにしております。アレルギーの最近の考え方や方向性が見られ、ありが たく拝聴しました。わたしのわかる範囲でまとめてみましたが、詳しくはそれぞれの講師のホームページなどを参考にして下さい。





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