今月の話題〜1月〜



 今月の話題は、2020.11.4〜11.15にかけて信州大学の川真田樹人教授会長で行われた第54回日本ペインクリニック学会講演より選んでみました。 今回の学会はコロナのために初めてのWeb開催となりました。今月は、特別講演、シンポジウムなどから私が興味ある演題から選んでみました。



1. 会長講演:これからの本邦におけるペインクリニックーその進むべきみちはー:

(洛和会丸太町病院、細川豊史)痛みは、現在では「呼吸」「体温」「脈拍」に加え、第5のバイタルサインとされています。1969年に第一回日本ペインクリニック研究会、 そして、1985年より「日本ペインクリニック学会」となりました。最近では、麻酔科以外の整形外科、神経内科、脳外科を始めとした多くの医師が参加し、さらに、痛みに 関心を持つ看護師、歯科衛生士、鍼灸,あん摩マッサージ師、心理師、薬剤師、理学療法士、作業療法士などの多彩参画がある。これからのペインクリニックは、神経ブロ ックや硬膜外刺激電極埋め込み、薬物療法、心理的アプローチ、リハビリテーション、集学的治療などのチームでの提供が必要になって来ています。薬物療法に関しては、 近年、新しい、多くの鎮痛薬が上市、又は適応となっていますので、これらの鎮痛薬の適応、正しい使い方、副作用に精通ことと痛みの原因診断とがペインクリニッシャン には必須となります。


2. 教育講演:帯状疱疹の発症予防とお帯状疱疹関連通の治療:

(福西会南病院、比嘉和夫)帯状疱疹は、水痘治癒後に水痘・帯状疱疹ウイルスは三叉神経節、脊髄神経節に潜伏感染し、回帰感染として帯状疱疹を発症させる。帯状疱疹 の発症誘因は水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫の低下である。この低下は50歳以上で低下する。予防:水稲ワクチンは帯状疱疹を約50%低下させ、最近、帯状 疱疹ウイルスのサブユニット抗原にアジュバントを加えたワクチンが開発され、約90%予防できる。急性帯状疱疹痛は侵害受容痛であり、帯状疱疹後神経痛は神経障害性 疼痛である。帯状疱疹発症早期には坑ウイルス薬の投与、帯状疱疹後痛への移行は短縮できないので、高齢者の痛みには、アセトアミノフェンが勧められる。ステロイドは 激しい急性痛は軽減できるが、PHNへの移行は阻止できない。PHNには、プレガバリン、ミロガバリンが使用されているが、三環系抗うつ剤は帯状疱疹後痛を軽減し、入眠作 用があり、帯状疱疹後痛の治療薬として考慮する必要がある。


3. シンポジウム:帯状疱疹後の痒み:

(帝京大学医学部麻酔科、岡山裕詩)帯状疱疹(HZ)の皮疹は通常3週間から3か月で自然治癒するが、HZの約15%は帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行し、その30〜60% に掻痒が併存する。帯状疱疹後掻痒(Postherpetic itch:PHI)は、神経障害性掻痒(Neuropathic itch:NI)である。PHIの治療は、神経障害性疼痛に一部類似するが同一では ない。PHIの治療として、K−opioid作動薬、加工附子、Topical ketamine-amitriptylineなど、インターベンショナルナルセラピーとして、対外衝撃波法、対外衝撃法などが 検討される。


4. シンポジウム:痒みのメカニズム:

(医療法人たまき皮膚科、生駒晃彦)痒みは末梢性と中枢性に大別されるといわれる。末梢性痒みとは、末梢神経末端の受容器に起痒物質が作用し生ずる痒みを指し、中枢性 痒みとは中枢神経の活動を通じて生ずる痒みを指す。痒みが神経のどのレベルで生ずるかを理解する必要がある。皮膚で放出される起痒物質による神経イン性の痒みや、脊髄 レベルの痒み、痒み過敏といった様々な痒みの機序がある。


5. シンポジュウム:「日本でのオピオイドクライシスを防ぐために」−製薬会社の立場からー:

(塩野義製薬、林伸治)2000年に米国議会で「痛みの10年」により積極的な鎮痛治療が推奨 され、オピオイドがNSAIDsに代わってオピオイドが安全な鎮痛薬と言われ、慢性疼痛にも使用された。トランプ大統領によりオピオイドクライシスによる過量投与による死 亡問題から緊急事態宣言があり、2018年から死亡者が減少に転じた。日本では麻薬規制が厳しく米国に比し、オピオイド鎮痛薬の乱用、依存の問題は少ないが、2012 年日本ペインクリニック学会から、「非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」が発行され、適正使用が推奨されている。



筆者一言

殆どの医学系の学会も、その他の人の集まる学会は中止になっており、私も今年は、すべての学会が中止で、郡山に籠っている一年でした。日本ペインクリック学会 は、Web形式で11月に行われました。この学会の講演の中から興味のある演題について、私の理解した範囲で話題をまとめてみました。わたしの外来でも難治で苦労する 痛みの帯状疱疹後神経痛についての話が中心になりました。



一口メモ

あけましておめでとうございます。
コロナ感染ニュースの年明けとなりました。
年末年始、皆さんがステイホームしていた結果がテレビの視聴率でなんとなくわかります。 東京都では年末に感染者数1300超えましたが、年末年始の結果がわかるのは2週間後です。

総理が2月下旬からワクチン接種開始とおっしゃっていましたので、早くワクチンの必要な国民に行き渡るよう願っています。 まだまだマスクとアルコールが必須となります。外出も制限されると思いますが、在宅・TV電話なども活用して乗り切りましょう。 今年もいつもと違う年にはなると思いますが、健やかで良い一年になりますように。





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