今月の話題〜5月〜



 今月(2020.5)の話題は、今年の2月28日、29日に東京で行われる予定でしたが、コロナ感染症のために中止になった日本慢性疼 痛学会の抄録集が送られてきましたので、その中から、私が理解した範囲内で、興味のあった演題を紹介したいと思います。この 学会が、延期でいつか行われることを期待しています。その時は、是非聞きたいと思っています。



1. 会長企画講演:湯治から現代湯治へ〜心身の苦痛を癒す古くて新しいアプローチ〜:

(百年ゆ宿 旅館大沼 五代目湯守、大沼伸治)湯治とは、一定期間、居住地を離れた温泉で生活することを指します。湯治は3つのステップから成り、 1)放電(自己の内部にたまったものを排泄)、2)充電(温泉や大自然を通じてエネルギーを取り込む)、3)溌電(エネルギー・生きていく力が漲 る)、である。現代湯治には重要な7つのキーワードがあります。転地効果、地物適量食、長期滞在、反復温泉泉浴、交流・コミュニティ、軽運動、自然 との共生です。


2. 教育講演T:痛み研究の現状と未来(自身のTRPチャンネルに関する基礎研究を踏まえて):

(生理学研究所、富永真琴)侵害刺激受容に関わるイオンチャンネル型受容体の研究をしている。受容体分子はかなりあきらかになりましたが、それらを 標的にした薬剤開発はいまだ成功していません。痛みは疾患でなく症状であり、また、痛みはおおくのの疾患にかかわるため、基礎医学研究として推進す ることは非常に厳しいと感じました。日本で、痛みの治療法に焦点を当てた物が多く、病態解明を目指した純粋な基礎研究をしているところが少ない。痛 みに関する基礎医学の伸展こそ臨床研究の隆盛につながると信じます。


3. 教育講演V:がんサバイバーの慢性疼痛〜診断と治療と対策:

(京都府立医科大学緩和医療、天谷文昌)2008〜2010年の3年間の5年生存率は68.1%であり、がんサバイバーの4割は慢性的な痛みを自覚している。 がんサバイバーに生じる慢性痛の代表格は術後痛と化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)である。一般的には術後3カ月が経過しても消失しない疼痛と定義 されるが、20〜40%の術後患者が術後慢性疼痛を発症する。がんサバイバー4の慢性疼痛はがん性疼痛とは異なる機序で生ずることを理解した上で治 療に臨むことが大切である。


4. 終末期患者における口腔・顎顔面領域の難治性痛痛に対する歯科的対応―多職種協同における歯科の役割―:

(神奈川歯科大学大学院歯学研究科、岩淵博史)終末期における口腔・顎顔面領域の疼痛の原因には炎症に伴う疼痛、全身状態の悪化に伴う疼痛、骨転移に 伴う疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛がある。慢性化する原因不明の口腔・顎顔面領域の疼痛では口腔のチエックが必要である。全身状態の悪化に伴う疼 痛では口腔カンジダ症の発生を忘れてはいけない。

口腔乾燥、額骨壊死、抗がん剤による神経障害性疼痛、心因性疼痛の舌通症などである。


シンポジウム1:慢性疼痛における本邦でのチーム医療の現状と今後:

(愛知医科大学学際的痛みセンター:(牛田享宏)慢性疼痛は器質的疾患を取り扱う診療科から見ると神経障害、関節障害、内科的障害に加えて二次的な 筋萎縮、関節拘縮など様々な要因があるため、運動療法・投薬・ブロックなど病院に応じた治療が生じる。一方で痛みは、心理社会的因子によって生じた り、行動変容なども相まって器質的な病態に伴う痛みを修飾し憎悪させる。すべてを並行して対応するにはチームアプローチが望ましい。慢性疼痛チーム 医療を構築する重要性がある一方で、医療資源の導入を含めた費用対効果という点からは課題も多いのが実情である。


シンポジウム1:地域医療の現状と理想像〜高齢者の慢性痛を中心に〜:

(仙台ペインクリニック石巻分院、川井康嗣)地域における慢性痛の対応は大病院や都市部の心療に比べて、患者層やリソース、マンパワーの点で異なって おり、それにふさわしい対応が必要とかんがえる。高齢者の孤独や生活不活化に配慮して在宅レベルd慢性痛評価とケアがおこなえれば理想であるが、マン パワーの点から多職種チームで診療する言うことは難しい。


シンポジウム2:慢性疼痛のパーソナリティ特性に配慮した対応方法と、動機づけ面接:

(東京大学麻酔科・疼痛センター、他、笠原諭、他)慢性疼痛外来の患者では、パーソナイティ障害が併存すている場合、一般的な認知行動療法の効果が 得られにくくちりょうに難渋しやすい。一般的に慢性疼痛患者は、心理的要因を否認し抵抗しやすい。否認・抵抗を示す患者に対して批判、失跡、説得な どをせずに、患者の考えや見通し、価値観を理解あいようと試み、患者自身から前向きな気持ちを引き出し、“患者自らが語る言葉によって”行動変容を 促すのが「動機づけ面接」という対話スタイルである。


シンポジウム2:慢性疼痛患者さんの痛み人生のためにペインクリニック医が出来ること:

(順天堂大学ペインクリニック、濱岡早枝子)慢性疼痛に対する集学的治療の有効性が注目される中で、個々の患者の疼痛やその背景にある器質的・非器質 的要因について正しく評価治療の組み合わせを選択するペインクシンイ医の役割は非常に重要っである。


ワークショップ1:慢性疼痛の漢方治療:(滋賀医科大学痛み治療センター:

(中西美保)漢方医学は、元来、身体全体から病因を多面的に捉えるア プローチ法が特徴で、痛みを全身症状の一つとして捉えるため、複雑な病態を捉えるのに適しておる。慢性疼痛は気の異常(気鬱、気逆)を伴うことが多く、 半夏厚朴湯、四逆散、柴胡疏肝湯などの気剤が有効である。冷えで痛みが憎悪する場合は、苓姜朮甘湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、真武湯、八味地黄丸など が冷えを改善させる。漢方治療は、慢性疼痛の治療手段として、西洋医学と統合医療を行う上でも有用な治療手段である。


ワークショップ1:痛みの治療機序からみた鍼治療の役割:

(明治国際医療大学はりきゅう学講座、伊藤和憲)臨床的なエビデンスにかんして数多く確認されている。特に筋骨格系の痛みに関して国内外で数多くの ランダム化比較試験が実施されており、緊張性頭痛や片頭痛、肩痛、線維筋痛症などの疼痛性疾患に有効性が示されている。




筆者一言:

中止になった日本慢性疼痛学会の抄録の中から、わたしの理解できる範囲から紹介しました。興味ある内容の発表が沢山あります。学会が、発表 の場がいつかあることを期待しています。



一口メモ

 コロナが騒がれてから4ヶ月くらい経つでしょうか。緊急事態宣言から1ヶ月近くです。 生活必需品を扱うお店などは、やや人が多いですが、場所によっては人が本当に減っています。日本国民頑張ってます!
マスクも値段は高いものの、見かけるようになりました。手作りのマスクをしてる方も見かけます。
読書を始める人、料理にハマる人、片付けをする人、筋トレ始める人、在宅時間が多く今までしてこなかった事を始めるチャンスでもありますね。

まだ終息まではかかりそうですが、皆さん頑張りましょう!


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