今月の話題〜4月〜



 今月(2020.4.)の話題は、2020.3.7.に東京で行われる予定だったのですが、コロナウイルスによる感染、 発症の多発により中止になりました。この研究会は興味ある話題が豊富で、多くの人が出席します。今回中止なのは大 変残念ですが、演題の抄録集が送られてきましたので、内容の興味ある演題について、抄録から私の理解した範囲で紹介します。



1.  特別講演:地域包括システムによる医療と介護に役立つ漢方:
(野木病院、加藤士郎)個人差はあるが、年齢が75才以上で、加齢現象によって日常生活における色々な動作に支障が出やすくなる状態を老年症候群(Geriatic syndrome)と総称する。 漢方医学には、食養生、気功などの運動、鍼灸や漢方などによって、心身一如の原則によって人の心と体の恒常性を維持する効果がある。実際、日本で使用される漢方の6割以上は高齢 者に使用されている。頻用されている方剤は、六君子湯、補中益気湯、十全大浦湯、八味地黄丸、牛車腎気丸、抑肝散などの補剤を中心とした漢方である。


2.  理事長講演:
(中部労災病院心療内科、芦原睦)加味帰脾湯は、貧血、精神不安、不眠症などに用いられ、心療内科で汎用されている。当科での加味帰脾湯の研究について述べる。事業所ではストレス チエックが行われており、メンタルヘルス不備予備軍がチックされ、この群は殆ど不眠を訴えていた。これらの群に加味帰脾湯を投与と勤務制限のみで健康状態を回復し得た。加味帰脾湯 の平均投与期間は40.5日であった。


3.  ワークショップから:漢方医学と心身医学の接点:
(1)地域医療における漢方と心身医療の融合〜小児不登校に対する漢方治療〜:(鹿児島大学地域医療学部、網谷真理恵)不登校児童は小中学生の全自動生徒の約1%を占め、その背景は身 体症状だけでなく、親子関係や交友関係などの社会的要因、発達要因、などの個人的要因が複雑に絡み合っている。漢方薬により身体症状が改善すると登校し始めることも少なくない。漢方 治療と心身治療を併用してもちいることは有用である。

(2)慢性疼痛の漢方治療:(関西医科大学心療内科、水野泰行)

(3)女性外来の立場から:(杉本クリニック、杉本貴美子)複雑で複数の愁訴を抱えた女性の医療に、複雑系で心身一如を基本とする漢方医学は大きな力を発揮する。漢方医学には「気血水」 や「中庸」を始めとした西洋医学では異常や治療法が見つからない病態の分析や説明に有用な概念が多く含まれており、治療可能な異常があるとの説明が患者に安心感を与える。天候や季節、 体調により症状は変動するが、四診を丁寧に行い漢方治療を行うことで、心身症の側面の強い患者の軽快に繋がり易くなる。



一般演題から

1.  薬剤使用過多による頭痛(薬剤乱用頭痛)の東洋医学的特徴について:埼玉医科大学脳神経内科、その他、光藤尚、他)薬物乱用頭痛の69例を対象に、治療前の「イライラする」 「ぐっと堪えることが多い」と感じる日数を解析し抑肝散の有効性を検討した。薬剤使用過多による患者は「イライラ」があり、抑肝散が有効な可能性があり、特に内向きに溜め込むような「イラ イラ」であることが示唆された。

2.  中枢機能障害痛「線維筋痛症」にたいして漢方製剤と認知行動療法(マインドフルネス)等施行症例報告:(寺田クリニック、寺田壮治)線維筋痛症は中枢機能障害の一つで、DMN 障害からくる「体幹幻覚痛/DMS5(DefaultModeNetWork障害)」の可能性が強い。非定型精神病薬プレクスピプラゾールや桂枝加芍薬湯を処方し、加味帰脾湯や帰脾湯、大棗を利用している。慢性 痛軽減における西洋薬や注射療法、また精神安定を伴う慢性痛軽減には「気」のコントロールを中心とした漢方製剤と認知行動療法の併用が非常に効果的であり、手ごたえを感じて居ます。

3.  治療的自己四診と、そして鍼治療:(朋祐会札幌産婦人科、佐野敬夫)東洋医学における基本的な診断法である四診は、治療的自己を確立する上で明確な対処法である。望、聞、問、 切には優先順位があり、望>聞>問>切>となっている。針治療は切診をさらに深めた治療法である。基本的な治療穴は、百会、風池、肩井、手の三里、足の三里、太衝などである。これらの穴に10~20 分置鍼した

4.  HSC(Highly sensitive child)に対する、漢方の効用:(新潟県立新発田病院、塚野喜恵)HSCは、刺激に敏感で感受性が豊か、他人の気持ちに良く気が付く、傷つきやすく疲れやす い、不安や心身の不調を来しやすい、緩急適応に時間がかかるなどで、5人に一人といわれる。小建中湯や甘麦ダイソウ湯などを投与し、丁寧な説明と漢方の使用で症状の軽減が期待できる。

5.  漢方が有効であった社会不適応症候の若年男性の2症例:(奥州市國保診療所、他、鈴木順、他)イライラ感、不眠、動悸で、職場で対人関係がうまくいかず転職を繰り返す男性、考え 事をすると一日中頭から離れなくなってい来たため来院。桂枝加竜骨牡蛎湯を投与し有効であった。

6.  不安により憎悪した多汗症に対する漢方薬の使用経験:(東邦大学医療センター大森病院、上野孝之、他)多汗症は、温熱、精神的な負荷などの影響で、多量の発汗が生じ、日常に支障 を来す病態で、原因不明の多汗症が持続し、抑うつ症状や不安症状を生じている状態に、漢方薬と向精神薬の併用で改善することが出来た。

7.  持続する動悸、腹痛に漢方剤が奏功した6症例:(まきメンタルクリニック、西崎真紀)腹痛や動機の身体症状の場合、検査をしても異常がない場合自律神経失調症という病名をつけら れがちである。腹痛があり、イライラしたり、興奮しやすい患者に小建中湯を与え効果を認めた。




筆者一言:
 今回、コロナ感染症のために中止になった研究会より、抄録の中から興味のある演題について、紹介しました。如何でしょうか?その中、何らかの形で発表されるものと期待しています。来年はきっと 素晴らしいこの学会に会うことが出来るでしょう。



一口メモ

 先月末、森友学園の件で命を絶った赤木俊夫さんの手記を文春オンラインで読みました。政府は、ここまで腐敗しているのかと驚かされました。知らない事は恐ろしい事ですね。 以前、新聞記者という映画を見た時も思いましたが、私たちは政府の情報操作に操られていて真実を知ることができないのでは?と。何が真実で何が作られたものなのか判断は難しいところです。

地位、権力、財力などにばかり固執する人には政治に関わって欲しくないなと思いました。どう思われますか?

コロナまだまだ広がりそうですね。みなさん、できる範囲で気を付けましょう。


「今月の話題」バックナンバーへ