今月の話題〜6月〜



 今月は平成31年3月2日に東京で行われた第55回日本東洋心身医学会より撰んでみました。東洋医学、特に漢方は心身一如が考え方の基本で、 心身医学と共通のところがあります。今回は「術ありて学あり」をテーマとして行われました。



1.特別講演:漢方は診療を豊かにする:

(大野クリニック、大野修嗣)漢方診療といっても西洋医学的な病名の確定は必須である。漢方の診断は病名確定後の漢方診断(証の把握) で、証の把握は四診(望診、聞診、問診、切診)によって心身の情報を取得することである。切診では脈診、腹診で患者に接触すること であり、漢方は患者さんの言葉からうまれた現場の医療との側面を持つ。漢方では心身は不可分であり、いかなる病も精神的側面を持つ。 漢方の治療には鍼灸・食養も含まれる。


2.教育講演:東洋の叡智が現代に蘇る〜オキシトシン健康法〜:

(統合医療クリニック徳高橋徳)オキシトシンは脳内で産生され、子宮収縮を促すことが知られていたが、抗ストレス作用や抗不安作用も あることが分かって来た。オキシトシンは「ひとを思いやったり、人から大切にされたり」するような積極的なひととの関わりに関係して おり、心身を保つために大切である。オキシトシンの発現に瞑想・鍼・漢方薬などが関与する可能性が示唆されている。


3.シンポジウム:漢方薬によるストレス対策

 1)柴胡剤の活用:(郡上市民病院心療内科、森清慎一)典型的な内因性うつ病であれば、抗うつ薬の投与+心身の休息が治療の原則と なるが、そうでない場合は証に応じて漢方薬を投与することで症状を緩和・改善できることが多い。とくに柴胡剤(大柴胡湯、柴胡加竜骨牡 蛎湯、四逆散、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯)はしばしば用いられる。いずれも漢方医学的には「裏熱」で、交感神経の過緊張が持続してい る病態と考えられる。柴胡剤は自律神経調整薬として働く。
 2)加味帰脾湯による脳視床下部オキシトシンニューロンにたいする作用:(加味帰脾湯は不眠症、精神不安、神経症の改善等の効果ある と古くから知られ、泌乳、子宮収縮剤として知られるオキシトシンの効果に共通点が認められることから、加味帰脾湯の薬理機序にオキシト シンが関与していることが考えられる。加味帰脾湯の経口ならびに腹腔内投与は脳室傍核のオキシトシンニューロンにc-Fos発現、を促すこ とが確認された。加味帰脾湯は室傍核オキシトシンニューロンの活性化を促し、また細胞内カルシウム濃度の上昇もみられた。室傍核を含 む脳スライスに加味帰脾湯を添加したところ、オキシトシンの分泌が確認された。以上のことから加味帰脾湯は脳のオキシトシンニューロ ンに作用して薬理効果を発揮している可能性がある。
 3)メンタルヘルス府庁舎に対する加味帰脾湯〜ストレスチェック制度を踏まえて:(中部労災病院MHC心療内科、芦原睦)事業所ではス トレスチエックが行われ、高ストレス者を抽出し、希望者には面接が施行される。メンタルヘルス不調を発する前から、何らかの勤務制限をして、 不眠を改善することが疾病の予防となり得る。28例の中27例に眠剤を使用せずに、勤務制限と加味帰脾湯の投与のみで健康状態を改善し得た。


一般演題より

1.漢方製剤を用いて抗不安薬をやめることが出来た高齢者の一例:
(香川県立保健衛生大学看護学科、塩田敦子)エチゾラムを投与していた患者に、変わりに抑肝散を投与したところ快眠が得られ、それを契機に、 エチゾラムを中止でき抑肝散を投与した。


2.SSRI離脱症候群とおもわれる症状に連珠飲(苓桂朮甘湯合四物湯)が有効であった一例:
(つるが町立半田病院産婦人科、木村光宏、他)SSRI中止後に浮遊感と吐き気という離脱症候群と思われる症状に、連珠飲を投与し効果があった。


3.治療抵抗性レストレッグス症候群に漢方治療が奏功した一症例:
(えのもとクリニック、福原慎也、他)苓桂朮甘湯合甘麦大そう湯が奏功した例を経験した。 4.自覚的ものわすれと軽度認知障害における漢方(エキス剤)治療の有用性:(宮城厚生協会泉病院、小田野行男、他)自覚的認知障 害やけいど認知障害にはおおくに腎虚があるので八味地黄丸や牛車腎気丸をベースにする。イライラ・怒りっぽい・不眠など肝気鬱滞がある時{裏 熱虚証}は加味逍遥散を、裏寒虚証では帰脾湯や抑肝散加陳皮半夏を、冷えがある場合は人参養栄湯(+附子末)を、高血圧がある場合は釣藤散な どを合方することにより、対応が可能であると考えられた。


5.漢方薬単味で効果が認められた難治性burning mouth syndromeの一例:
(大山記念病院脳神経外科、上田徹)原因不明の口内違和感から口内全体燃える感じになり、夜も眠れない状態、で色々の科で診療を受けたが原因 不明で、改善せず、加味逍遥散を投与したところ症状は次第に軽減した。


6.動物行動学的アプローチによる耳鳴に対する漢方治療:
(岐阜県総合医療センター漢方外来、佐藤泰昌)耳鳴がするということは、ストレスや不安が高まり、自分に見の危険が迫っていると脳が判断し過敏 に判断している。哺乳類の聴覚器官は、魚類の平衡器官から分化したため、蝸牛管はリンパ液で満たされており、水毒が関与すると考えられ、過敏性 改善作用と過敏性改善作用の柴胡加竜骨牡蛎湯と、利水作用と抗不安作用のある苓桂朮甘湯の併用と、治療前に投与目標が「耳鳴」が気にならないよ うにすることと説明することでよい効果が得られた。


7.EBM作業チーム報告:皮膚科心身症に対する漢方薬のEBM:
(近畿大学皮膚科、柳原茂人)皮膚は体表を覆う最大の臓器で、バリア機能、知覚、体温調節、経皮吸収・排泄の物理的機能が期待され、「皮膚は内臓 の鏡」というように皮膚は体内の情報を知るための窓としての役目も持つ。東洋医学の病理観は陰陽五行説に基づいて説明されることが多く、心理活動 も五行論で振り分けられ、それぞれ五臓に担わされている。日常診療において、心理的要因が関係している難治例に遭遇した場合に、通常の治療に加え て、心理的な部分を目標とした漢方薬を併用することで治療に導ける症例を経験する。




筆者一言:
 東洋医学と心身医学は基本的なところで考え方に共通のところがあり、現代医学で治療に窮した呼気に、東洋医学の考え方、治療法でよい効果を導出 せることがあり、日常診で役立っている。今回、様々な領域で実際に利用されておる経験が報告されています。



一口メモ

 最近のニュースは、ひきこもりや社会への不満での事件多いですね。しかも他の人を巻き込んでいる。
その為か、子供の引きこもり相談ではなく中高年の引きこもり相談も増えているそう。 40〜46歳の引きこもりは61万人以上。思った以上に働き盛りが引きこもっています。 政府は、外国人を向かい入れるのに合わせ、国民にも目を向けるべきでしょう。


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