今月の話題〜7月〜



 今月の話題は(2018.7.)、今年の6月8日、9日と大阪で行われた日本東洋医学会から選んでみました。今月は、講演、 シンポジウム等の中から、興味のあるところを選んでみました。



1. 教育講演:脳内ネットワークから見た漢方薬の効き方・抑肝散は脳神経線維の保護作用がある; (慶應義塾大学精神・神経学、仁井田りち)脳に関しては様々な謎が解明されようとしている。デフォルトモードネットワーク (Defourt Mode Network:DMN)は脳の安静時に最も強い機能的結合をしめす神経回路を指し、脳活動は意識的に脳を使っている 時最大になると思われていたが、DMNは安静時に脳血流の90%を使っていることが分かった。DMNに含まれる脳部位はアルツ ハイマー型認知症で早期にアミロイドの沈着が出現する部位に一致し、自閉症、統合失調症、うつ病などはDMNと重なる領域に 異常がみられる。拡散デンソルトグラフィーによる神経線維の前視床放線の描出不良は認知症の診断に有用であり、漢方薬の内 服で前視床放線の病腫が改善した例を経験している。抑肝散は脳のシナプス間隙のグルタミン酸放出抑制作用があり、脳の神経 線維保護作用に繋がり、神経線維が改善する。MRI画像によるその過程の可視化は処方選択の鑑別補助診断になるであろう。


2. 日本東洋医学会学術賞:オレキシン分泌陽性を介した抑肝散の作用〜抗ストレス効果・モルヒネ耐性抑制効果について〜: (昭和大学、久光正)オレキシンは神経ペプチドの一種で、オレキシンニューロンは主に視床下部に存在し、摂食行動や覚醒反応、ストレス 反応や疼痛のコントロールなど種々の生理作用に関与している。抑肝散は抗不安作用があり、抑肝散はオレキシンの分泌を抑制すること、さ らにオレキシンの分泌抑制を介して抗ストレス作用ならびにモルヒネ鎮痛耐性抑制効果をもたらす。


3. シンポジウム・漢方で治す技

1) 甘麦大棗湯{気の除細動器}:亀田総合病院、南澤潔、中田真司)漢方外来で、いわゆる不定愁訴を延々執拗に訴えられることがある、 このような例に甘麦大棗湯を投与し驚くほどの効果をしめした。Vfに電気ショック除細動を施行した時のようであった。
2) 働く女性を応援する漢方―休職から復職を支えた漢方症例6症例を経験してー:(女性クリニックポール、中原恭子)28才〜48才の6例で、 復職が4例、2例は退職したが働き方を変えて復職している。症状は倦怠感、消化器症状、ふらつき、めまい、不正出血、無月経、頭痛、下腹部痛、 微熱、不安感、背部痛、過呼吸、耳閉感、全例に下痢を伴っていた。全例に気の異常があり、肝鬱、脾気虚が多く、寒証が5例で、加味逍遥散が 4例、補中益気湯、附子理中湯、抑肝散加陳皮半夏が2名ずつであった。
3) 排尿・排便関連愁訴に対する?帰膠艾湯の効用:(島原こころのクリニック、川口哲)加齢に伴う男女の漏れ、出が悪い、に用いて有効 であった。
4) 漢方治療が有効であった社交不安障害の2症例:(相良病院麻酔科、河野恵子)「顔が赤くなる」人に苓桂朮甘湯、「緊張感による気が 遠くなる」苓桂甘棗湯が有効であった。


4. シンポジウム・漢方エビデンス

1) 循環器内科と漢方について、基礎医学から考察する臨床のエビデンス:(よこかわクリニック、横川晃治、他)日本東洋医学会EBM委員会 のまとめ、当帰芍薬散;脳卒中後遺症の悪化予防、桂枝茯苓丸:下肢深部静脈血栓症の腫脹軽減、黄連解毒湯:高血圧症の随伴症状の軽減、大柴 胡湯と柴胡化良好牡蛎湯は血清脂質に有効、五苓散:糖尿病患者の起立性低血圧に有効、芍薬甘草湯は糖尿病のこむら返りに有効、牛車腎気丸は リンパ浮腫を軽減する、牛車腎気丸は夜間頻尿に有効、釣藤散は高血圧や脳卒中後遺症の随伴症状に有効、呉茱萸湯は慢性頭痛の発作頻度を減ら す、防風通聖散は肥満の耐糖能異常に有効、補中益気湯は免疫改善効果がある。これらに考察を加えた。
2) フクロウ型の病態と治療法〜苓桂朮甘湯、治打撲一方を含めた薬物について〜:(久留米大学医療センター、惠紙英昭、他)「朝寝の宵っ張り」 でずっと寝ていたい、気分は憂鬱、意欲がない、体力がないなどの多彩な書状を呈する。水滞、気うつ、気滞、気逆等の気の異常を伴って、苓桂朮甘湯 を中心に補中益気湯や五苓散などを併用することで改善する。


5. シンポジウム・難治性皮膚疾患の東洋医学的アプローチ 1) 本音で語る!アトピー性皮膚炎治療における漢方の実力、臨床力、癒し力!!:兵庫医科大学皮膚科、夏秋優)一般的には皮膚症状の改善に黄蓮 解毒湯や白虎化人参湯、消風散などの清熱剤に体質改善剤として補中益気湯、十全大浦湯、柴胡清肝湯などが使用されている。結局は、食生活や生活リズ ムの改善、ストレス対策を実践することが最良の治療である。


6. 私の漢方・蘭方融合療法

1) フレイル・サルコペニアは克服できるのか?〜他施設共同臨床研究から見えて来たもの〜:(向坂医院 向坂直哉、他)フレイルは加齢とともに みられる筋肉量の減少つまりサルコペニアに運動機能・認知機能の低下、さらに慢性疾患の併存などが加わり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出 現した状態である。フレイルは漢方的に気血両虚に近いので人参養栄湯を投与し、検討し、有効であった。
2) 感染珊瑚状腎結石に対する内視鏡手術周術期における猪苓湯合補中益気湯による腎盂腎炎による腎盂腎炎急性憎悪抑制効果:(倉敷成人病セン ター泌尿器科、石戸則孝)猪苓湯は結石形成抑制作用と抗腎炎作用を有し、補中益気湯は免疫調節作用を有し生体防御機能を賦活化する作用を有する。 漢方薬の術前投与が感染尿路結石内視鏡手術周術期における腎盂腎炎急性憎悪を抑制する。
3) ワークショップ:痛みに克!−疼痛の東洋医学的治療指針(湯液と鍼灸):口腔顔面の慢性痛に対する東洋医学的治療指針:鹿児島大学漢方診 療センター、山口考二郎、他)1)三叉神経痛、五苓散系、柴胡桂枝湯系、桂枝加朮附湯がよく用いられた。漢方療法は著効は24%、有効49.2%であ った。2)持続性特発性顔面痛(非定型顔面痛AFP)、特発性歯痛(ADP)。漢方療法は著効48%、有効40%で、補中益気湯合当帰芍薬散、柴胡加竜骨牡蛎 湯加味方、抑肝散加味方、加味逍遥散などが著効。3)舌痛症、著効22.4&、有効50%で、補中益気湯合当帰芍薬散、抑肝散加陳皮半夏、加味逍遥散が有 効でった。




筆者一言:
 漢方医学の科学的、現代医学的に理解し、考える道を検討した講演から実際の漢方療法から漢方を検討した報告まで、多彩な講演がありました。 今回は、特別講演、シンポジウム等から興味あるところを取り上げてみました。日常診療で役立てていきたいと思います。



一口メモ

 W杯は残念でしたね。日本人監督の方が意思の疎通がしやすくていいんだろうなと思っていましたが、西野監督続投ではなく 外国人監督にもう要請しているとか。ころころ監督が代わって大変でしょうね。長谷部選手も代表引退だそうです。お疲れ様でした。

 落語家の桂歌丸さんが亡くなりまいた。笑点でよく見ていたなぁと懐かしい。髪が薄いとかミイラとか自虐も楽しかったです。
最後は苦しかったでしょう。弱音も吐かなかったと言うので気を張っていたんでしょう。やっとほっとしたでしょうね。 たくさんの人を笑顔にしてくれました。長い落語家人生お疲れ様でした。


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