今月の話題〜6月〜



 今月(2018.6.)の話題は、先月の日本慢性疼痛学会の、特別講演、シンポジウムなどと一緒に発表された一般演題のなかから 興味あるところを選んでみました。一般演題には、発表者の個性ある発表があります。



1. 開胸術後の痛みに対するデュロキセチンの効果の検討―当院における使用状況からー:(昭和大学医学部麻酔科:武富麻恵、他) 開胸術後の疼痛は発生頻度が高く、慢性痛への移行も高い。当院に紹介された開胸術後の痛みに対して、初診時の痛みが強い場合は、神経ブロック を選択する傾向があった。また、他の鎮痛剤が投与されていてもデュロキセチンを追加投与あすることにより、さらなる鎮痛効果が得られている。


2. 変形性膝関節症にたいする慢性疼痛に対するデュロキセチンの治療効果:(珠州市総合病院整形外科、大成一誓、森田保彦)平均 年齢76.9才(男8例、女65例)で検討し、痛みの軽減に有効であった。副作用は、悪心12.3%、口渇、傾眠5.5%、、ふらつき5.5%、便秘13.8%、食欲 不振1.4%、で、中止は悪心デ5.5%で、副作用が少なく継続性があった。


3. アサトアミノフェンは必ずしも安全でない:(北広島町豊平病院、戸田克広)NSAIDsに比すれば、はるかに安全性は高いが、妊婦 にアセトアミノフェンを投与すると胎児の発達障害、ADHA,コミュニケーション能力の低下、遂行機能低下、注意機能低下、知能低下、行動異常、肛 門性器間距離の短縮を引き起こしやすいという報告があるし、人生早期に投与すると喘息、喘鳴、湿疹、アトピー、アレルギー疾患、自閉症に罹患 しやすいという報告がある。成人に使用し、心血管障害、胃腸合併症、肝障害、精子運動への悪影響などが報告されている。必要最小量、必要最小 期間の使用に限定すべきである。


4. 胸部PHNにたいする胸部硬膜外ブロックが、疼痛増強予防に働いたと考えられた術後遷延性疼痛症例:順天堂大学練馬病院麻酔 科、天野功二郎、他)86才女性で、肺がん術後一か月、術創に一致して帯状疱疹が発症し、VAS55(PRS10/10)疼痛に週一回の硬膜外ブロックを9回行 い有効であった。


5. 仙腸関節障害における疼痛関連部位の特徴:(東邦大学大橋病院脊椎脊髄センター、伊藤圭介、他)仙腸関節障害は多彩な下肢関 連痛を呈する。我々は高周波熱凝固術を行っている。


6. リフエーミングを用いた心理介入により両手指の痺れとうつ状態が改善した一症例:(東北女子大学家政学部、三道なぎさ、他) リフレーミングとは、出来事に対する患者の意味付け方、認識の枠組みを変えることである。患者が受け入れがたい問題や行動を、患者が受け入れ やすいように意味付けし直すことで、患者は自分の苦境をこれまでとは異なる視点で捉えることが可能になる。心理社会的要因と考えられる痺れと 抑うつ状態の患者に対し、レフレーミングを導入することが症状の改善に有効であった。


7. どのくらいの運動強度で疼痛緩和と気分改善がもたらされるか:(日本福祉大学、丹羽裕斗、他)運動は、ある程度の負荷量に達 すると“runners high”と称されるような高揚感や鎮静感等の気分変化をもたらせることが知られているが、気分変化をもたらす至適運動量は明ら かでない。若年健康者で、運動強度、安静、強度30、50、75%HRRで検討した。いずれの運動強度でも運動による疼痛緩和ならびに気分改 善を認めたが、その有効性Hは中等度でも高く、さらに高強度運動では身体疲労度が強いほどに中枢性感作が抑制されにくい結果であった。運動に よる疼痛緩和や気分改善をもたらすには、強すぎず弱すぎない中強度程度の運動が最適高度である。


8. 中周波多数Silver Spike Point:SSP療法の刺激点と鎮痛効果の関係:(了徳寺大学健康科学部、石丸圭荘)針刺激を考慮した 経穴に対するピンポイントの中周波多段SSP通電では、経穴(合谷)の位置を末梢・中枢側に10mm移動させてもβ―エンドルフィン濃度の有意な増 加と圧痛閾値の上昇を認めることから経穴の周辺では、刺激による鎮痛効果の差に有意差はなかった。


9. 肩こりに対する磁気療法による効果:(関西医療大学保健医療学部、谷口典正、他)大型円錐磁石(表面磁束密度200mT)の効果 は筋硬度よりも組織弾性の変化率が大きかった。深層筋群から効果を及ぼす可能性がある。


10. 慢性疼痛(線維筋痛症)の原因疾患:(国際全人医療研究所、永田勝太郎、他)慢性疼痛はは機能的病態である機能性身体症候群 である。線維筋痛症の機能的異常は、1.血行動態不良症候群低反応型が潜在している、2.反応性低血糖、3.酸化バランス防御系の破綻、4. 内分泌検査(甲状腺検査、カテコールアミン3分画、DHEA−S、コーチゾール)の異常、などで、これらホメオスターシスの障害を克服した患 者は、社旗復帰し、自己実現していく。


11. Visual analogue scaleにはなにが表現されているか?:(藤田保健衛生大学麻酔科、有働幸紘、他)VASは複数の問診表による評 価を包括的に反映すると考えられ、最大値との差が小さい高値群はあらゆる種類の痛みを強く訴え、精神的な面の影響も大きい可能性が示された。


12. 術後再発三叉神経痛の診断と治療結果:(千葉徳洲会脳神経外科、北原功雄)当院で手術した三叉神経痛302例の内で再発したの は5例である。再発は女性で、再発までの平均は3年9か月である。再手術の所見は、減圧ふぇるとの脱落が一例、4例なTransverse pontine veinと 三叉神経痛の癒着であった。再手術で痛みは改善した。


13. 線維筋痛症に対して漢方薬が有効であった症例の検討:(祐愛会織田病院麻酔科、中平圭)線維筋痛症に、五積散、大柴胡湯、加味 逍遥散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を、季節も勘案しながら投与し有効であった。




筆者一言:
 痛みに対する治療、考え方が様々ですので、このような学会で、多様な方の発表に接して、情報を得ることが大切と思います。 今回取り上げた発表も興味ある事、参考になることがあります。



一口メモ

 今月は、初の米朝首脳会談ですね。アメリカと北朝鮮の話し合いなのに拉致問題の話を安倍総理がお願いしていましたね。 それは自分で話の場を持って言うべきだと思いますけどね。他国まかせで良くないですし、色々問題抱えすぎてて安倍総理には ガッカリです。 トランプさんは就任直後とイメージが変わり思っていたより行動が早いし、自国の為に頑張ってるなと思います。


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