今月の話題〜5月〜



 今月の話題は、2018.2.16〜17に大阪で行われた日本慢性疼痛学会より選んでみました。慢性疼痛に関する日本で、 専門家が集まる学会です。慢性疼痛は、我々の生活の中で、肉体的にも、精神的にも多くの影響を及ぼしています。興味ある話題を選んでみました。



1. 特別講演:心理ストレス型線維筋痛症モデルの病態生理と治療薬理学ならびにLPAシグナル機構:(長崎大学生命医科学、植田弘師)2016年のYASP7のサテライトシンポジウムで、 線維筋痛症は上位脳にメカニズムがあり、small fiber neuropathy等のメカニズムはむしろ二次的なものだとの見解が示された。著者は、末梢の筋骨格系の疼痛関連異常は中枢感作にも重要な役 割を有し、一種の疼痛機構のフィードワード、悪循環に関連するのではないかと考えている。心理ストレス型マウスの線維筋痛症モデルで、病態機構と治療薬理学的特徴から神経障害性疼痛の鍵 機構に「リゾホスファチジン酸受容体シグナル機構」関与することを紹介した。


2. 教育講演:三叉神経痛最新のオーバービュー:(千葉徳洲会病院脳外科、北原功雄)1)三叉神経起始部を血管が圧迫することが原因である。2)先天性の長頭と動脈硬化が原因、 3)診断は特徴的臨床症状が大切、4)カルマパゼピン200mg以上で考慮すべき、5)神経血管減圧術、6)椎骨動脈が関与する三叉神経痛には定位放射線治療が効かない、7)ガンマナイフ 治療後神経因性疼痛を来すことがある。8)再発三叉神経痛は、治療が難しい、9)SUNCT症候群に血管減圧術が有効な病態がある。


3. シンポジウム・腰下肢痛:

1) 腰下肢痛に対する神経根ブロック:(奈良県立医科大学麻酔科、藤原亜紀)椎間板ヘルニアには、」神経根ブロックは有効である。我々は、椎間孔硬膜神経ブロックを神経根ブロックとしている。 PHNには神経根ブロックは有効性のエビデンスはないが、硬膜外神経ブロックステロイドを注入するブロックの有効性が示されている。交感神経依存性疼痛や末梢循環障害では、両側神経根ブロックを 施行している。

2) 経皮的椎間板内治療の新しいアプローチーDisc-FX−:近畿大学麻酔科、岩崎昌平、森本昌宏)非特異的腰痛に椎間板の痛みが関与しており、椎間板内治療に注目されており、土方式経皮的髄核摘 出術やでコンプレッサーによる物理的減圧、経皮的レーザー椎間板内高周波凝固法による髄核の蒸散、椎間板内高周波熱凝固法によるによる繊維輪の熱凝固などが病態に応じて選択されてきた。最近は、 これらのデバイスを同時に施行することが可能となってきている。

3) 慢性疼痛に対する脊髄刺激療法:(兵庫医科大学ペインクリニック、恒遠剛示)脊髄刺激療法(SCS)の適応は、疾患ではなく痛みの病態(神経障害性疼痛、虚血痛)と考え、神経ブロックで効 果のある症例にSCSを導入している。本邦では、SCSのデバイスは3社あり、MRIの撮影が可能になっている。充電式IPGの登場により長期間の継続使用が可能になって来ている。

4) 慢性疼痛に鍼鎮痛理論を応用を物理療法について:(了徳寺大学健康科学部、石丸圭荘)鍼鎮痛の作用機序の一つとして、モルヒネ拮抗剤であるnaloxoneで拮抗される下行性疼痛抑制系で、針鎮痛 を誘発する刺激条件は経穴に雀啄に近い周波数である1〜5Hzを20分位の刺激でβ-endorphinなどの発現により鎮痛効果が発現する。さらに、脊髄分節性鎮痛系では、末梢神経支配に100Hz以上の針通電 を刺激開始と同時に深部組織を含み鎮痛が発現し、この鎮痛はnaloxonで拮抗されない。Gate control theoryなどの脊髄分節性鎮痛が関与すると考えられている。これらの刺激に、経皮的電気刺激、(TEAS) ,経皮的神経電気刺激(TENS)、これらを利用した逆三角円錐形電極を使用するSSP療法、低周波レーザーを経穴に照射する‘(レーザー針)がある。

5) 運動療法は慢性疼痛治療になり得るか:(日本福祉大学健康学部、松原貴子)運動療法は患者教育ともに行われ、second line として薬物療法、や非手術的治療を行い、それでも効果がえられない 時は手術が検討される。運動は、“ランナーズハイ”で知られる気分変化をもたらすとともに、全身の痛覚感受性を減弱させる。運動に、薬物療法、神経ブロック、インターベンショナル治療、第三世代認 知行動療法等を組み合わせたコンビナーション治療が有効である。

6) こじれた慢性疼痛にはオピオイド鎮痛薬である:オピオイド鎮痛薬による治療はこじれた慢性疼痛に重要な選択肢である:(獨協医科大学麻酔科、木村嘉之、他)オピオイド治療は、乱用や嗜癖と いったむしすることは出来ないが、適応、投与量、投与期間を厳密に行えば、認知行動療法、運動療法を含めた集学的な慢性疼痛のちりょうに欠かせない選択肢の一つである。




筆者一言:
 様々な慢性疼痛の対策、研究がこの学会に発表されています。興味あり、日常診療で参考になる発表がありますので、今回幾つか選んでみました。診療所で日常的に利用するのは難しい方法も紹介しまし たが、考えるうえで、参考になると思います。



一口メモ

 北朝鮮が非核化へ向かい他国と良好な関係を築く方向へ向かい、大谷翔平選手がメジャーで二刀流成功したりいいニュースも多かったですね。
ただ、最近耳にするジャニーズ事務所の危機。メンバー脱退、SMAP解散、そしてTOKIO山口さんの事件。とくに今回の山口さんの報道が目立ちました。 犯罪を犯しても復帰してくる芸能界ですが、そんなに甘くないと気付いて欲しいです。本人が会見をしたので、メンバーが謝罪会見する必要もなく、今後の活動 についての記者会見だけで良かったと思います。そうやってグループでかばい合って来たから「席があるなら戻りたい」発言が出たんだろうと感じました。
福島復興に貢献してくれていたので、心機一転のTOKIOの4人をこれからも応援します。


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