今月の話題〜3月〜



 福島県医師会による専門医共通講習会(平成30年1月20日)より、私の印象と理解した範囲で選んでみました。 「法と医療倫理」、「医療安全」「抗菌薬の使い方」についての講演でした。



1. 法と医療倫理:(渡辺健寿法律事務所、渡辺健寿)

法は倫理の最低限であり、法的責任は道徳的・倫理的責任に含まれるが、医の倫理には法的制裁を伴わない部分がある。法はルールの集積から、 ある行為をするに正しく選択するための行為規範である。医療倫理は職能上の自律的な規則で、法の規制とは別になる。医療倫理問題には、倫理 以外にも法、社会、心理、文化、宗教に関わる問題も含まれる。生殖補助医療より具体的判例を挙げてみる。

(1) 慢性骨髄性白血病の治療を受けるにあたり、精子を冷凍保存して、夫が死亡してから体外受精で懐妊、出産した。親子関係は認められたが、 死後懐胎子は父からの監督、養育、扶養を受けることは出来ず、相続に関しては、父の相続人にはなれない。

(2) 母が子宮頸がんのため子宮全摘を受け、母の卵子と父の精子で体外受精し、海外で代理出産をした場合である。アメリカでは裁判所が、代 理出産の場合も卵子提供者を母、精子提供者を父として認めたが、日本の裁判では、実際の妊娠出産した人が母であるとして、卵子提供の母と精子 提供の父との親子関係は認めなかったが、特別養子縁組の成立を認めた。

(3) 東海大学附属病院であった多発性骨髄腫の末期の患者の安楽死問題:治療中止、点滴中止したが、呼吸が続くため、ワソラン、KCLの静 注をおこなった、その後心停止した。積極的心停止の措置は認められず、有罪(懲役2年、執行猶予2年)。

(4) 川崎協同病院事件:気管支喘息重積で、心肺停止状態で病院に搬入されて、人工呼吸装置が装着されたが、低酸素血症のため大脳機能およ び脳幹機能にも思い後遺症が残る状態で家族の要請あり、人工呼吸を停止したが、自発の呼吸運動があり、ミオブロックを静注した。抜管の前に脳 波等余命を判断する検査が十分になされておらず、家族にも十分な情報が伝えられおらず、抜管は法律上許容される治療中止には当たらないとした。 抜管とミオブロックの投与は殺人行為を構成すると判断された。有罪(、懲役1年6月、執行猶予3年)。



2. 医療安全における因果信条の限界とあらたな概念レジリエントヘルスケア:(福島県立医科大学会津医療センター、橋本重厚)

従来の医療安全は「成功の原因と失敗の原因は異なる」という「別原因仮設」に基づき、事故やインシデントなど、うまくことが運ばなかった事象では、 その原因を探り、その原因を取り除くことで再発を防止するという(単純線形モデル)と考えて再発防止することされてきたが、インシデント情報を集 め、その都度対策を立ててもエラーを根絶できない、医療は単純線形モデルでは把握できないシステムから構成されているからである。高度な社会シ ステムの中で働く人々は、変動する環境や条件のもとで、様々なシステム要求を満たすべく努力している。それには弾力的な判断、的確な予測、柔軟な 適応、すなわちレジリエンスが求められる。レジリエンスはどのような問題が出されても常に合格点がとれるように、変化する状況に対応できる実力を つけることで、レジリエンス能力が大きければ大きなハザードにも対応できる。レジリエンスは予見、監視、対処、学習からなり、知識(基礎知識、専 門知識)、スキル・技術(専門スキル、機械操作法・標準手技、コミュニケーション)、態度、健康が大切な能力をようする。事故はモノだけでは防げ ない、システムだけでの問題でも無い、やはりヒトが大切なのである。ヒト、よいモノ、よいシステムを与えられても、それを使って与えられたタスク を果たす能力を獲得し、実行する意志がなければ機能しないのである。



3. 「AMRアクションプランと抗菌薬の使い方」:(福島県医科大学感染制御学、金光敬二)

薬剤耐性菌(antimicrobial resistance;AMR)増加し、世界的な問題になっている。抗菌薬の使用料と薬剤耐性菌の出現には密接な関係があるとさ れ、抗菌薬を乱用すれば耐性菌が選択される。抗菌薬は医療だけでなく家畜や愛玩動物、魚類、農業でも使用されている。日本では、医療に約520t、 動物に約1000t、農業に約400tが使用されている。耐性菌について考えるとき、幅広く、“one world, one health”呼ぶ。無用な抗菌薬の投与、 エビデンスのない予防投与、長期使用などは避けなければいけない。臨床検査も必要であり、国民の理解も不可欠である。このまま行けば耐性菌増加の ため、2050年には、世界で死亡数第一位で1000万人が感染症で亡くなり、癌による死亡は800万人という話がある。




筆者一言:
 医療における裁判の判例取り上げて具体的に話しています。裁判の行き方、考え、判断の持って行き方など、なるほど、そういう考え、判断の仕方な のかと理解出来たところもあります。医療安全、抗菌薬の使い方についても、日常診療で、具体的に忘れていけないことが述べられています。忘れずに 行きたいと思います。



一口メモ

 平昌オリンピック終わりましたね。メダル13個!!!
フィギュアスケート男子金銀おめでとうございます!スピードスケートの小平選手も速かったですね。見たことなかった競技も多く、スピード感たっぷ りで楽しかったですし、元気ももらいました。もう数日後にはパラリンピック。応援します!頑張れ日本!


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