今月の話題〜10月〜



 今月の話題は、2017.6.10~6.11.に東京で行われた全日本鍼灸学会より選んでみました。今回は、「世界に誇る日本鍼灸」を主題として 行われました。特別講演、シンポジウムなどより、興味のあるところを選んでみたものです。



1. 特別講演:脳神経外科疾患による身体症状:
(東京大学、齊藤延人)頭部外傷、脳血管障害や脳腫瘍などで、閉ざされた頭蓋内脳圧が上昇し、1)意識障害、2)病変側の動向の拡大、3)対側の除脳硬直が3徴候、慢性に脳内圧が上昇すると、1)頭痛、2)悪心・嘔吐、3)うっ血乳頭である。障害された部位の症状、半身不随、失語、半盲、失行、失認などがある。脳神経が損傷されと、1)嗅神経:嗅覚障害、2)視神経:視力障碍、3)動眼神経・滑車神経・外転神経で目の運動障害、4)三叉神経:顔面の知覚障害、5)顔面神経:顔面神経麻痺、6)聴神経:聴覚障害、などそれぞれの神経の障害がみられる。


2. 特別講演:個人差と遺伝子発現の多様性:
(東京医医科大学遺伝子診療センター、沼部博直)24、001種類の遺伝子が知られ、その中で、ヒトの体作りや機能に関わるたんぱく質の設計図となる遺伝子の配列は全体の3~5%程度と考えられている。ヒトの24種類の染色体に含まれる33億塩基対のDNA配列が解読されている。2万4千の遺伝子のなかで、病気の発症や体質との関わりが明らかとなっているものは2割の5千ほどである。成長の過程でスイッチが入ったり切れたりし、遺伝子の相互作用を強めたり弱めたりするゲノム配列もあり、人の多様性は遺伝子的要因だけでなく環境要因によっても生じているのです。鍼灸も遺伝子の働きを変化させるものの一つと考えられる。


3. 教育講演:温度感受性TRPチャンネルの生理機能と臨床における意義:
(岡崎統合バイオサイエンスセンター、富永真琴)きゅうの効果は、1)施灸皮膚組織の再生・修復過程で生ずる作用、2)温熱刺激による感覚を介して生ずる作用、3)皮膚から浸透する成分による作用に大別される。温熱による感覚終末は、ヒトでは27のTRPチャンネルがあるが、そのうち11に温度感受性があるといわれる。カプサイシン受容体TRPV1、TRPV2,メントール受容体TRVM8、わさび受容体TRPA1、TRPV4、TRPM2,TRPM3が感覚神経終末に発生する。これら温度感覚性TRVチャンネルがどのように灸に関するかは、あまり明らかになっていない。


4. 教育講演:日本鍼灸の形成と変遷―将来医書との関わりにおいてー:
(宮の森医療大学鍼灸学科、浦山きか)日本の鍼灸の始め資料、562年に呉人・智聰によりもたらされた書に明堂図があった。701年唐令に基づいた典薬寮のテキストが作られ、医針生は、「本草」「脈決」「明堂」を学び、「素問」「黄帝針経」「甲乙」「脈経」を学んだ。丹波康頼により984年に「医心方」を編纂した。1194年に丹波長基による鍼灸書「四花灸法」が撰された。14世紀には栄西による「喫茶養生記」、1574年には曲直瀬道三による「啓迪集」、「鍼灸集要」が注目される。


5. パネルデイスカッション:
腰髄神経根障害を呈する腰部脊柱管狭窄症に対する保存療法の3郡比較:東京大学22世紀医療センター、岡敬之)薬物療法、運動療法、鍼灸療法で比較した。ZCQ(Zurich claudication Questionaire)重症度は全群で改善したが、ZCQ身体機能は針治療で改善していたが、薬物療法、運動療法では改善を認めなかった。ZCQ身体機能スコアは運動療法より鍼治療で有意な減少をみちめ、ZCQ治療の満足度は薬物療法より鍼治療で有効であった。


6. 日本鍼灸の特徴である触れるを科学する:
 1) 司会:(宮の森医療大学、山下仁、明治国際医療大学、伊藤和憲)日本鍼灸の特徴は触れることである。標準化した経穴を治療した時と圧痛などの反応部位を治療点としたときの効果について比較した。  2) 触れることの臨床的意義―経穴を触れることの意義:(はり灸夢恵堂、津田昌樹)(1)患者が術者に触れられたことで自分の状態、状況を感じ、(2)術者はふれることで体表全体の状態、局所の所見、刺鍼部位選択、切経としての所見を得る。術者が患者に触れることでお互いの理解、不安、安心が治療効果を修飾する。  3) 治療部位としての反応点における臨床的意義:(明治国際医療大学、伊藤和憲)日本の鍼灸師の調査で、治療点としてもっとも多く使用されているのは圧痛点や硬結などの反応点であり、運動器疾患の治療で効果的なのは、(1)反応点、(2)圧痛点、(3)圧痛点と硬結である。治療点を考える際には、反応を念入りに確認し、患者と確認し合うことが、効果を上げる上で大切である。  4) 触れることで生ずる生体反応:(桜美林大学、山口創)身体接触がもたらす効果を2つの面から紹介する。(1)視床下部で産生され副交感神経を優位にしてストレスによるHPA(視床下部―下垂体―副腎系)軸の機能を抑制してリラックスを促す、(2)皮膚には様々な触覚受容器があるが、C触覚繊維が、快の感情を喚起させストレスを癒す効果がある。これら2つともに心理的要素が重要な役割を果たす。  5) 触れることの客観化―触れることの脳科学―明治国際医療大学、村瀬智一)C繊維を介した伝達と心地よさとの関連性が示されている。機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて検討した。



筆者一言

 鍼灸では、最も大切な、「経穴」「経絡」とは“何か”という命題についての検討は難しいが、それを避けて通っているので、どうしても議論が分かり難くなっています。有力な、有効な治療方法であり、経験、歴史もある鍼灸ですので、是非、広く受け入れられる医療としたいと思います。日本鍼灸とは何かについての検討も、繰り返し、突っ込んだ議論、研究が必要です。



一口メモ

 福岡の高校で生徒が教師に暴力をふるう動画が出回りました。考えられない。 しかも教室内でほかの生徒が笑っている。恐ろしいと思いました。映画の中では無いんです。そこで起こっている現実なのに。 そしてまた同県の中学生が教師に暴力をふるい現行犯で常人逮捕。
公けにならないだけで、こんな辛い思いをしている教師は、恐らくもっといるのだろうと今回思いました。 昔は、教師は尊敬すべき人で尊敬まで行かずとも人生の先輩でした。でもある時から教師が生徒に暴力をふるっているとニュースが増え、今は 生徒が教師に暴力をふるい逮捕。このままでどうなるのか、まともな大人は育つのでしょうか。いつから何故こう変わってしまったのか。 考えても何もできないのでとりあえず、自分を見直そうと思いました。


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