今月の話題〜9月〜



 今月(2017.9.)は、今年の6月に名古屋で行われた日本東洋医学会総会の一般演題より選んでみました。前月は講演、 シンポジウムなどよりえらんでみましたが、一般演題にもユニークな、興味のある演題が多々あります。私が興味を持った 演題を選んでみました。御覧になって下さい。



1. 異常な寒気を訴えた症例の治療経験〜これが熱厥なのか〜:(亀田総合病院鉄蕉会、南沢潔、中田真司)
陽明病、熱厥状態を疑い白虎加人参湯を投与し効果のあった例を紹介した。


2. 関節の激しい疼痛に対する鍼灸治療〜患部に触れられない症例〜:(鍼灸中川、中川俊之)
疼痛が激しく、痛みや症状が移動する場合は、圧迫の施術は適当でない。六部定位の脈診でツボを選択し、散針と知熱灸をおこない、有効であった。


3. 疲れを契機に悪化したアトピー性皮膚炎の顔面湿疹が白虎加人参湯と補中益気湯の併用で軽快した2例:(東京女子医科大学東洋医学研究所、麻生悠子、et)
虚証の冷え症で、顔面紅斑の悪化に関した、疲れを伴ったアトピー性皮膚炎の顔面湿疹に、白虎加人参湯と補中益気湯を併用して有効な例を報告した。


4. 慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎に参蘇飲が奏功した2症例:(北里大学東洋医学研究所、石毛達也、他)
難治性の慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎の2症例で参蘇飲が有効であった。参蘇飲は一般には、胃腸虚弱者の感冒や咳に用いられる。


5. 一般的治療で改善しない鼻閉に対しての越婢加朮湯の使用経験:(霞ヶ浦医療センター、他、星野朝文、他)
鼻の明らかな鼻閉原因がなく、手術を勧められた例に、越婢加朮湯が有効であった症例を報告した。


6. 突発性難聴に漢方と鍼灸の併用治療が奏功した一例:(北里大学東洋医学研究所、鈴木邦彦、他)
耳鼻科で突発性難聴と診断されたが、プレドニン、メコバラミン、ATP等の治療を希望せず、漢方、鍼灸の治療を希望された患者で、舌診、脈診、腹診で、手足 の冷えと腹部所見より当帰四逆加呉茱萸生姜湯を処方し、鍼灸も併用して、一週間後に聴力検査で正常に回復した。


7. 桂枝茯苓丸と帰脾湯で改善した耳鳴症の一例:(陣内耳鼻咽喉科クリニック、東邦医療大学医療センター大森病院東洋医学科、陣内賢、他)
耳鼻科でも耳鳴は難治で苦労するが、1年以上経過した耳鳴の患者、心脾両虚、お血の診断で桂枝茯苓丸と帰脾湯を投与し、6週には半分以下に軽減した例を経験した。


8. 桂枝茯苓丸加ヨクイニンが奏功した耳管狭窄症の一例:(葛西中央病院内科、他、濱口卓也、他)
アレルギー性鼻炎に伴う耳管狭窄に桂枝茯苓丸が奏功した。局所である耳管の炎症にもお血・水毒が存在したものと考えられる。


9. 当科で妊娠に至った7症例の東洋医学的考察:(越谷市立病院、糸賀知子、他)
全例で月経前緊張症があり、肝気鬱結を認め、3例に腎虚の合併、お血2例、気血両虚1例であった。女神散単独または加味2例、加味逍遙散単独または加味3例、四逆散1例、?帰調血飲1例であった。


10. 背部の冷えに対して帰脾湯が著効した1例:(東邦大学医療センター東洋医学科、千葉浩輝、他)
背部の冷えを主訴とする患者に熱性の生薬を中心としない帰脾湯の投与が有効であった例を報告した。心兪の冷えがあり、総合的な判断も考慮して治療した。


11. 不眠症に対する竹じょ温胆湯の有効性について:(センブククリニック、他、千福貞博、他)
竹じょ温胆湯は咳に有効とされているが、不眠症に有効であった例を報告した。全体で有効異常64%、男性に有効例が多い、うつ病には無効、先行西洋薬の有無は効果に無関係、副作用はなし。うつ病でない虚弱者、高齢者に有用ではないか。


12. 防風通聖散が著効を呈した高齢者夜間頻尿の一例:(竹田眼科、竹田眞)
食欲睡眠良好、両側弱い胸脇苦満、臍下不仁、の患者に防風通聖散を投与し著効を得た。


13. 夜間頻尿を訴える高齢女性に対する苓姜朮甘湯の効果:(女性医療クリニックLUNA心斎橋、二宮典子、他)
苓姜朮甘湯は高齢女性の夜間女性の夜間頻尿に有効であった。


14. 漢方薬を用いた肥満治療:(あおやまクリニック、木瀬英明、他)
BMI25以上の男性24人、女性73人で、食指導は1日の中一食(できれば夕食)は炭水化物をはずす、無理に食べずに残すこと、間食はしないこと。防風通聖散、防己黄耆湯、大柴胡湯に加え、症状に対して、葛根湯などの麻黄剤と投与した。6か月で体重減少の中央値5.3kgであった。


15. 三叉神経痛の漢方治療に関する文献的考察:(鹿児島大学口腔顔面センター口腔外科、山口考二郎、他)
渉猟できた例142例で、最も多かったのは五苓散系(五苓散47例、柴苓茵陳五苓散湯26例、五苓散加味7例)、次、柴胡桂枝湯系(柴胡桂枝湯6例、柴胡桂枝湯合桂枝加芍薬湯34例)、桂枝加朮附湯5例、その他17例であった。桂枝加朮附湯、柴胡桂枝湯系、五苓散系がカルマパゼピンの減量および疼痛緩和に有効であると考えられた。


16.  アフタ性口内炎に茵陳五苓散を投与した6例の検討から:(愛媛県立中央病院漢方内科、角藤裕、他)
黄連解毒湯、五苓散がよく用いられるが、これらで効果のなかった例に茵陳五苓散を投与し著効を得た例を経験し報告した。


17.  流涎に真武湯が有効であった1例:(小澤歯科医院、小澤夏生、他)
82歳の女性で効果が得られた。通常は、人参湯が使用されることが多い。


18.  慢性骨盤痛症候群(CRPS)に対し漢方治療が著効した4例:(久留米大学医療センター、他、亀尾順子、他)
西洋医学的に治療困難なCRPSに、駆お血剤、清熱剤、補血剤が効果的であった。


19.  手指、上腕の痛みに対して八味地黄丸が有効であった3症例:(東京女子医科大学東洋医学研究科、津島伸彦、他)
便秘、頻尿、腰痛と腎虚の症状を共通して認められる手指、上腕部痛に症例に投与し、有効であった。頻尿、腰痛にも軽減効果があった。


20.  提肛散料が便失禁や脱肛に有効であった2例:(北里大学東洋医学総合研究所、青木ゆかり、他)
便失禁、脱肛に補中益気湯の有効性が知られているが、今回、提肛散が有効であった経験を報告した。


21.  四肢の冷えと片頭痛を伴った緑内障患者にたいする当帰芍薬散の効果:(東北大学漢方内科、菊池章子、他)
当帰芍薬散は証が合致する症例では正常圧緑内障の治療の一つとなる。


22.  6年間持続した難治性再発性吃逆に茯苓飲合半夏厚朴湯が著効した例:(阪神医療生協協同組合第三診療所、澤井一智、他)
著効を呈した例を報告した。


23.  起立性調節障害を伴う片頭痛に苓桂朮甘湯が著効した15歳女性例:(独協医科大学神経内科、水島隆秀、他、)
15歳女性で有効であった例を報告した。


24.  良性発作性頭位めまい症に対し漢方薬が奏功した一例:(岐阜県総合医療センター、佐藤泰昌、他)
めまい専門外来の40%を占めるともいわれる良性発作性頭位めまい症に五苓散が有効であった。


25.  「尿漏れ」に対する?帰膠艾湯の効用―「ちょい漏れ」「追っかけ漏れ」からの解放を目指して」:(島原こころのクリニック、川口哲、他)
「ちょい漏れ」「追っかけ漏れ」の高齢者に投与し効果を認めた。



筆者一言

 今回は一般演題より、興味ある演題を選んでみました。日常診療で参考にしてみたい発表が沢山ありました。私の診療所でも参考にさせてもらいたいと思います。



一口メモ

 今年は1993年以来の冷夏だそうです。確かに晴れた日がほとんどありませんでした。でも甲子園は晴れていて高校野球は予定通りでしたね。 冷夏で葉物野菜が高騰などのニュースが多く、実際も高くなっています。梨などの果物も収穫が遅れているようですし、コスモスの開花も遅く、向日葵も 向く方向がバラバラだったり下を向いていたりしています。今月からは通常気候に戻ってほしいですね。 気候の変化が激しいので、皆さんお身体を大事にして下さい。


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