今月の話題〜8月〜



 今月の話題は、6月2日から4日にかけて名古屋で行われた日本東洋医学会から選んでみました。漢方も広範囲に使用されており、 日本の医療の中に根付いています。今回は特別公演、シンポジウム等から選んでみました。話題も広範囲で私がこの学会に入った 50年前とは雲泥の差です。興味のあるところのみ選んでみましたので、見て下さい。



1. 特別講演:漢方診療35年の経験から:(北里大学東洋医学総合研究所、花輪寿彦)
いくつか後学の参考になることを「経験知」としてのべる。1)気剤(香蘇散、半夏厚朴湯)・虚証で問診表に〇が一杯あり、 メンタルに問題がありそうな人は香蘇散・めまい・不安発作などで3回以上救急車を呼び、検査で異常のない人は半夏厚朴湯、2)煩躁、(実に多数の例)・汗が出なく て痒くて煩躁するものに大青龍湯・口渇、多汗、多尿などで茯苓四逆湯、3)三焦の調節、上焦、中焦、下焦の三焦の調節が大切、4)癌の治療経験、癌があるが元気に、 十全大補湯、茯苓四逆湯や加味(霊芝、半紙蓮、板藍など)、4)現代医薬品の進歩と補剤、関節リュウマチや炎症性腸疾患など難病の「生物学的製剤」に補剤の併用が 有効


2. 特別講演:古典は臨床医の目で読む−自験例から考える−:(松田医院、松田邦夫)
「古典を読め、後は患者が教えてくれる」とは、大塚敬節の教えであるが、古典は古い時代の医書だけでなく、和田東郭、尾台榕堂、浅田宗伯等の 著書のように、臨床に役立つものを選ぶよいと考えている。大塚は追試を尊重し、師の言を絶対視する教条主義を排斥している。


3. 教育講演:咽中炙臠−不可解な咽中の怪―:(介護老人保健施設みずほの里、山際幹和)
咽中炙臠(のどの中の炙った肉片)の不可解な感覚を引き起こす“不可解な怪”に、金匱要略で半夏厚朴湯をあげているが、近年、 柴朴湯も注目されている。難治な例には、GERDの治療を併用するなど東西医薬併用治療に対する期待が大きい。


4. 女性と漢方:(東京女子医科大学東洋医学研究所、木村容子)
金匱要略に、女性は「虚」と「冷え−陰」の状態が一緒になって病気になりやすいと記載されている。今回は、先天の気を貯え ている「腎」、後天的な気を生成する「脾」と「肺」に関連した症例を供覧した。1)不妊治療のストレスが原因と考えられる慢性咳嗽に八味地黄丸が有効であった例、2)桂 枝加竜骨牡蛎湯で不眠だけでなく月経不順が改善した例、3)更年期女性の不眠に補中益気湯が有効であった例、4)呼吸器症状がみられる更年期女性に柴胡加竜骨牡蠣湯が有 効であった例を報告した。


5. 特別シンポジウム:わたしの漢方医学の学び方:(あきば伝統医学クリニック、秋葉哲生)
(ほかのひとと同じ道を歩まない)人の行く、裏に道あり、花の山という言葉があります。
(暗記することをいとわない)必要なものは暗記してしまうのがよろしい。答えを引き出すのに短時間ですむ。
(だれでも達人になれます)発想が重要です。


6. 特別シンポジウム:現代医学に活かす漢方:(富山大学和漢診療学、嶋田豊)
漢方は四診により証や処方を決定するが、現代では西洋医学的診療も合わせて行い、総合的に治療方針を検討すべき場面が多い。総合的に検討し良 い効果を得た症例を報告した。


7. 特別講演:これから漢方を学ぶ方へ:(表参道福沢クリニック、福沢素子)
1)よい師につく、2)「傷寒論」「金匱要略」「類聚法講義」などの古典を読む、3)治験例を沢山読む、4)生薬と方剤の両方を学ぶ。必ず 四診を行い診断し、基本的な方剤を20位使いこなす。なるべく一つの方剤で治療する。


8. 伝統医学セミナー:嗅覚障害の機序とその治療:(石橋総合病院、市村恵一)
嗅覚は生物にとって重要で、2.2万の遺伝子の中2%がにおいに関している。匂い物質が鼻腔上部の嗅細胞に達し、嗅糸を通り高位中枢に達する。匂い分子が 嗅粘膜に到達しない呼吸性、嗅粘膜に問題のある嗅粘膜性、インパルスの伝達障害の神経性、嗅球以後に問題のある中枢性がある。従来は嗅覚障害の治療には、ステロイドの点鼻療法が 中心で、ビタミンを補助的に使用した。感冒後嗅覚障害には、エビデンスが多くないが神経成長因子を増強する当帰芍薬散が最も有効である。


9. シンポジウム:漢方外用剤によるアトピー性皮膚炎の治療:(すずこどもクリニック、吉田政己)
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリアーである皮脂(セラミド)が少ないため皮膚の水分が少なく乾燥するのが原因。漢方では皮膚を湿潤させる作用の ある作用の当帰と熟地黄(各5g)に掻痒感を抑える茵?蒿(3g)を加えて入浴剤を作る。ステロイ軟膏、保湿剤は使用し、2週間の入浴で、有効(50%)、やや有効(32.6%)、無効 が6例、悪化が2例であった。


10. シンポジウム:抑肝散とその加味方により問題行動が著しく改善した認知症の3例:(ますずがわ神経内科クリニック、真鈴川聡)
認知療法の治療方法はないが、進行を抑えたり症状を軽くする薬物療法が中心になる。認知症の問題行動にたいして抑肝散と抑肝散加陳皮半夏 を主にもちいている。黄連解毒湯、三黄瀉心湯、釣藤散、当帰芍薬散、加味帰脾湯など用いることがある。抑肝散と加味方で問題行動が著しく改善した症例を経験した。


11. シンポジウム:生薬の煎じ方の違いの科学的分析:(千葉大学柏の葉診療所、角野めぐみ)
漢方薬は、従来は散、丸であったものが傷寒論のころから煎じに変化、生薬も激烈な作用をもつものからマイルドになり、薬容量も変遷していった。現在 では、常煎法で、おおよそ600mlの水から半量になるまで煎じ、一日2〜3回に分服する。新たな煎じ方の提案は出来ないかを検討した。たとえば、半夏厚朴湯の蘇葉を後煎5分にした場合、蘇葉 の良品の決め手になる指標物質(ペリルアルデヒド)が残存しロスマリン酸が通常より多い煎じ薬を作成することができた。


12. シンポジウム:肥満症治療への新たなる挑戦〜葛根湯篇〜:(栄漢方クリニック、大熊康裕、他)
漢方薬の減量効果については、防風通聖散、防己黄耆湯、大柴胡湯などが散見される。今回、葛根湯の減量効果と 風邪予防効果について肥満症の103例で検討した。3か月で30kg以上の減量が38名(36.9%)、50kg以上の減量10名(9.7%)治療1年後で3kg以上の減量が71名(68.9%)、風邪の予防効果も認めた。


13. 漢方入門講座:口腔領域への漢方治療:(大阪歯科大学細菌学、王宝禮)
1)口内炎代表的口内炎は、慢性再発性アフタ、多発性慢性再発性アフタ、帯状疱疹時口内炎、扁平苔癬があげられる。漢方には、茵?蒿湯、半夏瀉心湯、黄連湯など。
2)歯周病は細菌性、環境性、宿主因子が大きく関与し、炎症型には排膿散及湯、免疫型には補中益気湯、黄連解毒湯、十味敗毒湯がある。
3)口臭は、生理的、器質的、精神的な遠因により口臭に不安を感じる症状。代表的漢方は、補中益気湯、加味逍遙散、半夏厚朴湯があげられる。




筆者一言

 日本東洋医学会総会の講演の中から興味のあるところを選んでみましたが、基本となる古典と、その後の先達の研究、検討、口訣、現代医学からの漢方検討から、多彩で、日本漢方は何なのか、 迷わされます。どれも大切で、真実なのだと思います。各人がそれぞれに、理解し、考えて漢方療法が行えるようですが、やはり、医学として、再現性のある、系統だった学問として形作られるこ とを祈ります。次回は一般演題より選んでみたいと思います。



一口メモ

 支持率が落ちている安倍内閣。第3次安倍第3次改造内閣が発足しました。完全に森友&加計学園問題、南スーダン国連平和維持活動部隊日報関連の方がいなくなりました。 これで問題をうやむやにされるのではないかとの声も多いですね。仕事人内閣、それも常時そうであって頂かなくては困るんですよね。
隠すことをやめないと支持率は戻らないと思いますけど、もう隠しすぎて表に出せないのでしょうか。。。


「今月の話題」バックナンバーへ