今月の話題〜2月〜



 今月の話題は、今年平成29年の1月8日に東京で行われた第37回メディコピア教育講演シンポジウム「糖尿病診療の未来」 より選んでみました。毎年新年早々に行われるこのシンポジウムは一般の方々も対象にして行われるシンポジウムです。 私の印象に残ったところを選んでみました。



1. 我が国における糖尿病診療の課題:
(東京大学代謝栄養学、門脇孝)個々の患者に適した治療目標を選択し、治療目標の達成状況を定期的に把握し、最適な治療を 行って行くことが必要である。治療には、個別化医療、先制医療、精密医療がある。*肥満は脂肪細胞の肥大、アディポネクチ ンの増加―>インスリン抵抗の亢進―>心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の増加の一因となる。*糖尿病の増加、とくに高齢者が増 加しー>サルコペニアー>フレイルー>転倒の危険が増加する。*糖尿病では、食後血糖200mg/dl以下、HbA1c 6.5以下、空腹 時血糖126mg/dl以下が糖尿病の診断、*腸内細菌(メタゲノム)のインスリン抵抗性に関与する善玉菌が大切である、*日本人 の37%~57%が糖尿病の遺伝子を持っているが体重5kg減少させると遺伝子の影響をなくすることが出来る。*肥満はアディポネ クチンレセプターの感受性を低下させる。アディポネクチンレセプターの感受性を亢進させるAdiporoRonを発見し、分子構造も わかって、製造へ進んでいる。マウスでの延命効果は認められる。

2. 糖尿病の検査―いまとこれからー:
(新東京病院検査室、石橋みどり)血糖検査として、血糖、HbA1c, グリコアルブミン(GA)1.5-Ag などがある。HbA1cは4~8週、 GAは1~4週、1.5AGは1週の血糖の状態を示す。これらの検査値も幾つかの状態の影響を受ける。HbA1cは、肥満、ステロイド、ネフ ローゼ、甲状腺機能亢進などの影響を受ける。

3. 糖尿病治療薬の進歩:
(浅井生命成人病研究所、大西由希子)インクレチン作動薬が2009年以降発売され、DPP4阻害薬、GLP1作動薬、SGLT2阻害薬も登場 した。ライフスタイルに合わせたインスリン、注射デバイスや針の改善もされている。新薬で、アメリカでは認可されているが、 日本では認可されていない薬剤の理由、薬剤が臨床使用できるようになるまでの苦労、費用の点の話もあった。

4. 持続血糖測定器とインスリンポンプ:
(徳島大学先端酵素学研究所、黒田暁生)本人がT型糖尿病で実際に様々な対応を行っており、その経験の中からの話。日本でも、 2010年から皮下血糖の連続測定が可能となった(CGM・Continuous Glucose Monitaring)。基礎インスリンと毎食後に超即効型 インスリンを使用する。日本でも2015年からリアルタイムにCGMとインスリンポンプの組み合わせたインスリンポンプSAP(Sensor A ugmented Pump)が使用可となった。今はアメリカでは、AI(人工頭脳)を使用したタイプも使用されている。



総合討論より

1. 門脇:食事治療の基本は、1)カロリー、2)糖質、脂質、蛋白のバランス、3)塩分、個別に合わせた治療が必要で、 高齢者では、サルコペニアの予防のため食事制限は適度にする。糖質は50〜60%、蛋白は20%、脂質は30%目安、脂質は動物性・ 飽和脂肪酸は少なくし、魚類を摂る。食物繊維は20g/日目安。運動も大切で、有酸素運動とともにレジスタンス運動も加えるとよい。

2. 石橋:検査室と医師の連携が大切。

3. 大西:新薬でアメリカでは認可され、日本で認可されない薬剤がある。日本で行われた臨床試験で、副作用、使用上の 問題が考えられ認可されていないものがある。

4. 黒田:最新の治療、デバイスの使用には、それなりのお金がかかる。



一口メモ

 下校中の小学生の娘を交通事故で失い、再発防止のために集団登校の見守り活動をしていた73歳の三原さんが 児童9人が横断歩道を渡るのを見守っていたところ、突っ込んできた車にはねられたというニュース。 相手は酒気帯び運転。とんでもない。
 事故が起きた横断歩道に信号はなく、普段から車がスピードを出して走っていることが多かったため信号設置も 要望を出していたそうですけど、設置されることもなく今に至っているんですよね。 道路の同じところを何度も工事するお金があるなら、こういう必要な信号などに使って頂きたいです。 73歳の三原さん、なかなか出来ることではないです!凄いと思いました。15年も見守りお疲れ様でした。


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