今月の話題〜8月〜



 今月(2016.8)の話題は6月に高松で行われた日本東洋医学会総会より選んでみました。弘法大師の生まれた県であり、 心身一如の考えが大切な東洋医学ですので、興味ある演題が多くみられました。まずは特別公演、シンポジウム等の一部 より選んでみました。



1. 特別講演:21世紀の漢方医学・漢方医学における「創薬」を目指す:
(愛知みずほ大学人間科学研究科、佐藤祐造)
1)糖尿病と漢方:糖尿病は「金匱要略」での消渇に相当し、八味地黄丸が有効処方とされている。牛車腎気丸が糖尿病神経障害に由来するしびれに有効である。
2)インスリン抵抗性と漢方:インスリン抵抗性に及ぼす漢方薬(牛車腎気丸、桂枝加朮附湯、防風通聖散等)を検討し有効の可能性がある。防風通聖散は、減量のみでなく、 運動と併用すると肥満2型糖尿病の予防と治療に有用である。



2. 日韓学術交流シンポジウムより:健保保険適用になっている日本と韓国のエキス製剤:(東北大学CYRIC,関隆志)
韓国では単味のエキス剤も使われている。日本でのエキス製剤は148種、韓国は98種、韓国では単味のエキス製剤は48種で、日本と韓国どちらでも使われているエキス剤は 28種である。韓国で使われて、日本では使われていないものは28種。


3. シンポジウム「がんと漢方」がん細胞の転移に及ぼす漢方薬の効果とその作用機序ついて研究した。
1)結腸癌の肝転移モデル系において、十全大補湯、補中益気湯の補剤が明らかに異なった免疫系最ぼの活性化(NK細胞、マクロファージ)をかいした抑制機序を示した。
2)十全大補湯は補中益気湯と同様に肺がんのリンパ節転移の抑制効果が見られなかったが、人参養栄湯は、肺がんの縦隔リンパ節への転移を抑制した。
3)牛車腎気丸は抗がん剤、パクリタセキアの抗腫瘍効果に影響せずに、その副作用である「しびれや下肢痛」に効果があった。がん治療において、全人的にささえていく医 療としての緩和・しゅうまつき医療において説教区的に漢方薬が用いられることを期待する。


4. 漢方薬でがん治療は楽になり、患者は延命する:がん研有明病院漢方サポート科、星野恵津夫)
1)がんによる症状の緩和:がんに伴う症状(全身倦怠、食欲不振、体重減少、下痢、便秘、腹満、不眠、不安、焦燥、抑うつなど)の多くは漢方の併用で軽快する。
2)治療による症状の緩和:胃がん術後の摂食障害、腹部手術後の腸閉塞、膵がん術後の下痢や低栄養などの多くは改善する。
3)進行がん患者への対応:進行がんに対する定番処方は、「補剤+補腎剤(+附子末)、眠前の駆?血剤」である。補剤は3大補剤(補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯) のいずれか、補腎剤は牛車腎気丸、駆?血剤は桂枝茯苓丸が定番である。


5.   シンポジウム「探訪、古今、未来の薬草園」
1)植物園と薬用植物研究―高知県立まきの植物園の取り組みから:(高知県立牧野植物園、水上元)牧野植物園は、植物園で、植物の保存と研究、植物に関する知識の教育、 普及、植物展示を通じた憩いの場を提供するという総合型植物園である。研究の一つとして世界の生物多様性スポットの一つミャンマーソロモン諸島の活性植物を探査し、その 場所をGPSで再現性を確保し、植物の鑑定、栽培、研究を行っている。
2)徳島大学薬学薬用植物園における教育・研究及び情報発信に関する取組み:(徳島大学薬学部、柏田良樹)武田の薬草園を模範として、工学系の薬草園として発足した。 「漢方薬園」「民間薬園」「漢方処方園」「西洋生薬園」「水生植物園」「温室の植物」「樹木園」「染料植物園」「果樹園」「ハーブ園」「絶滅危惧植物園」のテーマ別に 、教育、研究に利用し、一般の方々にも開放利用されている。
3)国産生薬生産に活かす新たな薬草園の役割:(千葉大学環境健康フィールド科学センター、渡辺均)当センターは今年から、健康機能性植物種苗開発センターを設立し、 多種多様な生薬資源を国内で安定的供給するために、環境や地域の実情を加味した上で、各地域に適した薬用植物の情報を提供し、有料系統を作出・提供し、産地化を進めて いく。作って農家が、商売としてやっていけるか、農業生産をどうするか、開発から生産まで関与し、生薬の産地化を進めなければならない。


6.   シンポジウム「傷寒論再々考」の中より
1)現代に息づく傷寒論:(三谷ファミリークリイック、三谷和男)臨床家の古典の条文の解釈は、漢文学の専門家が解説される文言の解釈ではなく、自分の抱えている患者層 からその法則性をひきだすことになる。解釈は、学問的に正しい解釈は確かにあるが、自分の臨床の中で納得できればそれでよい。扁鵲が述べた「病内にあれば、其応必ず表に あらわる」と述べた思想が生きている。


7.ワークショップ「漢方をサイエンスする」より
1)サイエンス漢方処方概論:(静仁会静内病院、井齊偉矢)生薬学は「神農本草経」を編纂される過程で、毒性の強い植物は除外されており、臨床経験の蓄積が、「傷寒論」 の処方180種が現代の第2、3相試験に相当する結果を得て、「傷寒論」が完成したと考えられる。漢方薬は微量の多数の集合体で、ヒトが生存するベースになる免疫/炎症系、 微小循環、水分代謝系、熱生産系の変調を正すという応答を引き出す。
2)イングルエンザと麻黄湯:(福岡大学病院東洋医学診療部、鍋島茂樹)麻黄湯によるインフルエンザウイルス増殖抑制効果は、主としてインフルエンザウイルス感染のlife cycle の初期に作用する。ウイルスに対する直接作用でなく、宿主の初期免疫を強化することによって効果を発揮する。
3)漢方診療におけるPIPC(Psychiatry in Primary Care)漢方診療で、通常の身体科診療に比し、メンタルな問題を抱えている患者が多くなる傾向にある。「心身一如」という考えから 漢方が身心の疾患に有効であることが知られている。しかし、漢方治療は有効であるが限界もあり、漢方治療にのめりこみすぎて肝腎な病態の本質を見逃してはならない。



筆者一言
 東洋医学会の中でも話題は、数え切れませんが、今回取り上げた話題からその一端が見えると思います。最近は、東洋医学と現代医学との問題、中国医学と日本漢方・日本鍼灸の問題、 韓医学と日本の漢方・鍼灸の問題、更に世界のWHOを通した問題など山積です。私は、日常診療においては日本漢方、日本鍼灸を中心に行っています。




一口メモ

 ポケモンGo世界的に大人気ですが、事故や事件も多発してますね。ながらスマホは危ないなと改めて思います。 電車のホームでも今まで以上に注意のアナウンスが流れています。みなさん、周りに注意してください。

そして、今月はオリンピックです。 しかし会場も完成していない状態。治安も悪い。本当に開催できるんでしょうか。。。

日本がんばれ!そして無事帰国してください!


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