今月の話題〜4月〜



 今月の話題は、今年の3月5日に東京で行われた第52回日本東洋心身医学研究会より選んでみました。東洋医学、 特に漢方は「心身一如」の医学ともいわれ心が重要視さらています。日本独自で、日本漢方の行き方の一つかと思 います。興味ある演題も沢山ありますり選んでみました。がんが全て治るわけではありませんが、現状についての 講演でした。



1.会長講演:関西医科大学心療内科、福永幹彦
すでに確立した症候群といまだあいまいな症候群とが混在している従来からある機能疾患や症候群を包括的に取り扱うための概念、 機能性身体症候群(functional somatic syndrome)(FSS)について、その存在意義に賛否があるが、症候のオーバーラップが多い こと、共通した特徴をおおく持つことがあり、包括的に取り扱うことで、診断と治療にとって新しい視点が提供できるのではない か。2013年一年間に関西医科大学枚方病院総合診療科受信3317人の第一病名から、FSSは24%、MUS(不定症候群)は10%、 両者で34%であった。FSSの患者で心理社会面の関与が45%であった。FSS,MUSは高い頻度で二次医療圏を受診しており、一 般診療所でも15〜19%と考えられ、医療経済も含め、現代医療にとって大きい問題である。

2. ワークショップ
(1) 婦人科外来で思春期の心身症に漢方を用いて:香川県立保健医療大学看護学科、塩田敦子、他)思春期外来に受信した124 名のうち月経に関連して受信したのは67%月経不順に当帰芍薬散、温経湯、月経困難症で当帰芍薬散、芍薬甘草湯、当帰建中湯 など、月経前困難症に加味逍遥散,抑肝散など、起立性低血圧に苓桂朮甘湯、頭痛に葛根湯、呉茱萸湯、夜尿症に抑肝散などが使 用された。成長期の思春期で心身一如の効果がある、漢方は薬剤の量もコントロールし、病状の偏りを中庸にもっていく漢方治療 が適している。

(2) 緩和医療における漢方製剤のEBM:(近畿大学内科学心療内科、奥見祐邦)
厚生労働省の認可された漢方製剤は148種あり、混和医療の分野でもいくつかの分野で頻用されている。主にしびれ、食欲不振、 筋疼痛に使用され、十全大補湯はがんの進行抑制、延命効果、補中益気湯の腫瘍の縮小効果はないが、延命効果がみられ、牛車腎 気丸、芍薬甘草湯などの有効性も認められている。

(3) 口腔領域愁訴におけるエビデンス、フレイルに関わる味覚障害について:(トヨタ記念病院歯科口腔外科、牧野真也)人は 誰しも食を通して、「命」を繋いでいる。健康長寿に滑舌の悪さや食べこぼし、むせる、咬めない、味覚がない、食べれられない といったオーラル・フレイルは危険因子である。味覚異常には亜鉛を使うが、オーラル・フレイルには六味丸、竜胆瀉肝湯、麦門 冬湯なども使用される。


3. 一般演題から
(1) 漢方薬に反応し10年以上の引きこもりから脱した起立性調節障害の35歳男性例:(埼玉医科大学神経内科、光藤尚、 他)抑肝散と苓桂朮甘湯の6か月間の投与で改善した。

(2) 漢方治療と認知行動療法を行い改善した自明・不眠の一例:(鹿児島大学病院漢方診療センター:森永明倫、他)香蘇散 と甘麦大棗湯で入眠障害が改善し、呼吸法を使用し改善を得た。

(3) 片頭痛を合併した中等度大うつ病性障害に漢方診療が奏功した一例:(原土井病院総合診療センター、坂本篤彦、他)当 帰四逆加呉茱萸生姜湯加附子で改善を得た。

(4) 壮年夫婦間における抑肝散の夫婦同服の可能性について:(大分大学内分泌・膠原病・腎臓内科、穴井学、柴田洋孝)夫 婦間の感情的な対立や劇場的な言動により心身の不調を訴えているケースに行い良好な結果であった。



筆者一言
 東洋医学、漢方療法では、心身一如の考えが中心にあるといわれますので、心身医療の分野で、活用範囲が広いと思います。今回 の発表からも日常の診療に役立つ話題があります




一口メモ

 アルビノの番組を見ました。先天的に皮膚や髪のメラニン色素が無い、あるいはほとんど無い症状。
発症率は2〜3万人に1人いるかいないかと言われていて日本人にもいます。
偏見の目で見られる一方で、超自然的な特殊な存在としても見られているため狙われるそう。日本では無いですけど、 呪術師がアルビノの手足、臓器、血液を調合してお守りを作り、アルビノの体の一部を持てば幸運を招くなどの迷信がは びこっている国があるそうです。
昼間は太陽を避けて暮らし、夜は襲われ手足を切断されたり誘拐される恐怖に怯えて生活するなんて。 そんな事が現代に起きている事に驚きました。知らない事が多いなと改めて思いました。


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